シュトゥットガルト日報 5月3日

FMX2011

FMX初日です。ドイツ滞在中はいままで暖かかったのに、急に寒くなりました。カンファレンスの前に30分ほどのスクリーニングが開催されています。これが9:30開始なので、カンファレンスは10:00からのスタートとなります。SIGGRAPHやGDCと比較すると遅い開始です。セッション時間が60分枠というのもちょっと違いますね。

●The Cutting Edge Facial Animation Workflow on Crytek’s Crysis 2
Image Metricsのフェイシャルキャプチャサービスは評価試用した経験があるのですが、正面からバストショットで顔の演技を収録したビデオを送るとフェイシャルRIGにデータを流し込んで納品してくれるというサービスです。このサービスの売りは面倒なモーションキャプチャスタジオを使ったり、細かなマーカーを役者の顔にセットするといった手間を省けるという点です。音声同時収録にも向いていそうです。 現在はFACEWAREという外部にも提供されているツールを主軸に、同様のサービスを展開しています。正面からのビデオ映像から顎のライン、口蓋、目、眉毛等の部分をトラッキングします。これを基に撮影した役者の顔をサーフェース化することで、役者の顔のフェイシャルキャプチャデータが生成されます。Crysis 2では、予め役者とキャラクタのリファレンス表情を作成して、役者とキャラクタの表情の指標化を行うことで、リターゲットに大きな破綻が発生させることなく、顔の動きの再現性を高めています。大きく動く特徴的な表情には各コントローラを直接動かして、差分を調整することが出来ます。いくつかのコントローラを顔の挙動に従って同時に複数コントールするコントローラも用意されています。 イメージトラッキングやリターゲットの指標化は新しいテクニックではありませんが、各テクニックの有効性を上手く組み合わせてフェイシャルアニメーション環境が構築されています。フェイシャルキャプチャ全般に言える事ですが、基本的にキャラクタと役者の顔の各パーツの特徴が似ている方が、役者とキャラクタの間であまり差が生じません。これはImage Metricsでも同じでした。セッションを前までは、もっと画期的なトラッキング技術やリターゲット技術があるのかもしれないと期待していたのですが、Image Metricsのフェイシャルの高い再現性は基本的な部分を丁寧、かつ効率的にコントロールする工夫の積み重ねによって実現されているのだと思いました。まぁ、なんとなくそれが今のフェイシャルアニメーションの真理だとは思っていましたが。。。

●Path Tracing and Unbiased Rendering for Animation Production
プロダクションワークで使用されているライティング、レンダリング技術に関して、基礎から現在の最新技術を紹介する概論のような構成でした。 SIGGRAPHで見られるほど技術色は強くなく、ほどほどの部分まで解説されていてアーティスト系向きの内容でした。個人的に興味深かったのは、HDRIで全周のシーンプレートを作成する流れでした。専用のカメラがあり、Z情報もとれるとの事で、かなり凝ったシーンプレートを作成することが出来そうです。各技術の特性を認識して、複数の技術を組み合わせて新しい映像表現を作り出しているのが、現在のデジタルVFX表現であるという点で、こうした概論的な内容はとても大事な事だと思います。

●Untangling “Tangled” The Challenges and Inspirations of Creating a World around 70 Feet of Hair
『塔の上のラプンツェル』の世界観の構築と技術的にどのように映像化していったかについて。このセッションはすごい人気で、並んでも多くの人が会場からあぶれていました。そして自分も。。。。会場横に中継モニタが用意されていましたが、このスペースではカンファレンスパスはノーチェックでした。う〜ん。内容は世界観の構築に関しては少しだけ、多くの時間が世界観、シーン、ムードによってどのようにライティングやルックスを作り上げて行くかという点に費やされていました。ブロンドの表現に関しては、実際の髪の毛の見え方の観察から技術的原理の部分まで特に詳しく解説されていました。この作品、既に日本でも公開されていて、見た方もいると思いますが、往年のディズニー・プリンセス・アニメが3DCGで復活した印象を自分は持ちました。このセッションでも所々にルックスの様式化などを、過去の作品から取り入れていることが説明されていました。こうした今までの積み重ねられた様式と3DCGならではの新しいライティング表現を使って、プリンセス・アニメの表現の再構築されているように思えます。このクオリティで次のプリンセスモノも期待したいところです。やはりというか、この作品にはかなり多くのアーティストが関わっていることが、大きなキャプションでアピールされていました。

FMX2011

●Black Swan
日本でもうすぐ公開となる「ブラック・スワン」のVFXメイキングです。自制ある1人のバレリーナの中に、ある事をきっかけに生まれたもうひとつの面がデジタルエフェクツで表現されています。鏡に映るもう一人の主人公の表現には、モーショントラッキングとモーションコントロールカメラを連携して実現されています。完全にシンクロするのではなく、数スレームのズレを与えると効果的に見えるとか。。。主人公の精神状態が極限状態で体にも変容が現れるシーンでは、体にいくつものトラッキングポイントを仕込み、デジタル素材を体、カメラの動きとマッチングさせています。この手法は、入れ墨の表現でも使用されたそうです。 このセッションでは実写とデジタル素材をマッチングさせる為に、一般的となったトラッキングの手法のいくつかの事例が紹介されました。これは意図した事なのかどうなのか不明ですが、今日受けたセッションのすべてが、メイキングでも、既存のテクニックに関してテーマを絞り込んで話が構成されているように思えました。

1日目が終わった感想は、セッション間に休憩時間が設定されていないので、移動したらもう始まっていたとか、既に満員で入れなかったという事がありました。このあたりは勝手が分かるようになるまでちょっと苦労しそうです。セッション時間の枠としては60分ですが実際は45分〜50分程度です。SIGGRAPHやGDCと比較すると短いので、話の構成としては概略的な部分で展開されているものが多かったように思えます。このあたりは学生向けということもあって、ボリューム的には丁度良いのかもしれません。内容に関してはSIGGRAPHと同じようなものをやっているので、こっちの学生はこんな贅沢な機会があるのか!!と思いました。

トルコフード

セッションが始まったので、食生活は急にジャンキーになっていきます。ドイツにいるのにトルコ的お弁当をテイクアウトしました。ちょっとアメリカンw