3日目になると機器展が始まり、会場が前日よりはるかに賑わっていた。セッションも1時間区切りの内容になって色々見て回るので、1日中会場を歩き回って忙しくなる。SIGGRAPHのカンファレンスと比較すると、1セッションが60分で短め、でも話す内容は意外とボリュームがあるので、全体的に進行が早くて、聞き取りながらメモするのが結構大変。それでも押し押しの進行でセッション間の30分の移動時間まで若干食い込むこともあった。そういう状況なので、1日中びっしりセッションを受けるのは結構しんどいかもしれない。
More Than Just A Pretty Map – Creating Next-Generation Materials for LAIR
PS3 タイトルの「LAIR」でのテクスチャマップの制作方法に関して。高品位なマテリアルを制作するためのテクニックが紹介された。ノーマルマップの説明から始まり、ちょっとしたテクニックの紹介を行っているので、チュートリアル的な要素の強いセッションだった。タイトルから予想して、ドラゴンのマテリアルに関する内容だと思っていたのだが、城壁など背景のマテリアルに関するものだった。テクニックでZBrush をノーマルマップの編集ツールとして使用していたのが面白かった。写真素材を使用しているが、PhotoshopやZbrushで編集したり、3Dでモデリングした岩のオブジェクトからイメージを抜き出したものを合成したりと、ノーマルマップをさまざまな手法で作成している。Zbrushの活用はスカルプトツールというよりは、Photoshop的な使い方だ。
Keynote: Game 3.0: Developing and Creating for the 3rd Age of Video Games
大きな会場での基調講演その1。30分前にホールに向かったのだが、カンファレンス会場があるブロックを半周するほど行列が伸びていた。開演前には席のブロックを2チームに分けてのお化けサッカーボールを使用しての簡単な玉いれゲームで会場は盛り上がっていた。まずはweb2.0を例にgame3.0とはどういったイメージなのか簡単に説明が行われた。web2.0で実現した、写真共有ストレージやSNS、Blogといったものと同様に、個人のクリエイティブ、カスタマイズにコラボレーションといったキーワードが挙げられていた。そこでまず、プレゼンテーションされたのがhomeというサービス。カスタマイズ可能なアバターを介して、自分の部屋を自由に装飾したり、映画の予告編をダウンロードして張り付けたり、ミニゲームを楽しんだりすることが出来る。ユーザー同士のチャット機能もある。見た目は豪華なSecondLifeのようだ。コミュニケーションや個人の環境がカスタマイズできるといった内容は特に目新しさは無かった。ただ、ゲームのダウンロードや、カラオケ(Singsterという海外カラオケサービスに対応するらしい)、映像、などを総合的に PLAYSTATION3でやってしまおうというホームサーバー的な考え方は面白いかも知れない(でも、この使い方はスーパーコンピューター的な使い方で、エンタテイメントではあるけど、ゲームではないと思う。)
homeの後に紹介されたLittle Big Planetがgame3.0らしいと思った。ゲームのステージにパペット的なキャラクタを使って、自由に色々なオブジェクトを配置したり、装飾を加えたりすることが出来る。これらが全て物理的に挙動するようになっており、あるものはシーソーのように動いたり、ぶら下がると回転運動を始めたり、配置によってパズルアクションのような遊びが楽しめる。プレゼンテーションでは、4人のキャラクターが制作したステージをあれこれ模索しながらゴールに向かって冒険するといった遊びが行われた。かつて、2Dのピンボールゲームやアクションパズルゲームでコンストラクションキットが同梱されて、ユーザーが自由にゲームのステージを作る楽しみが提供されたことがあったが、この現代版といっても良いかもしれない。 3Dオブジェクトで配置したステージは個人の作品としても楽しめるし、ネットで他のユーザーと共有して作った世界で遊ぶといった楽しみ方が出来る。単なるバーチャルステージを作るのでは無く、ゲームとして楽しめるというのは魅力的に思えた。
Athletic Performance: Intelligent Believable Characters
EA SPORTSのFIFA07を例に、モーションデータをつなげるという手法ではない、生体力学によるモーションの自動生成とAIによるNPCの自然な挙動を実現した自社技術の発表が行われた。次世代においては背景のクオリティが格段に上がり、それに見合うようアニメーションも次世代にふさわしいリアルな挙動が必要だとまず述べている。
そこで、キャラクタの重心の状態やコントロールしようとする動きなどリアルタイムで生体力学的に解析、モーションを自動生成することで、スムーズで自然なアニメーションを実現している。またNPCに関しては、例えば、プレイヤーをアシストするならプレイヤー側を向く、ディフェンスの場合はボールを持った選手を追尾するなど、より精度の高いAIによって、目線や首の向き、上半身の動きがコントロールされ、これに対応するように重心が調整されて、最適なアニメーションが生成されている。
IKやモーションキャプチャー、ノンリニアアニメーションなど、アニメーションを作り出す環境は進化してきてはいるが、常にアニメーターの手によるアニメーションがベースとなっている。次世代のアニメーション表現としてこうしたプロシージャルなアプローチも必要なのではないかと思った。 Animation is Gameplayという締めくくりの言葉が印象的なセッションだった。
Cinematic Game Design II: Storytelling
ゲームの演出シーンを映画理論的なアプローチで紹介するセッション。何気なく付けている演出をこうして体系付けて説明してもらえるというのは、確認的な意味もあって面白い。セッションでは映画での事例を提示し、テクニックに関する解説と演出上の留意点などが説明される。その後、ゲームタイトルでの当てはまる事例を提示して、ゲームにおける留意点を説明するといった構成で、9つのテクニックが紹介された。中には昔の2Dゲームを事例として挙げるといった無理な部分もあったが、ゲームが急速に進化して3D化、映画的な演出が加味できるようになったのが、ここ数年という状況なので、これは仕方のないことかもしれない。個人的にはゲームを映画に近づける必要はないと考えているが、StoryTellingの機能を有しているという点で、歴史があり理論付けられたテクニックが確立している映画の知恵を借りることは、その先にあるゲームでしか出来ない表現に近づくための手段として必要なことではないかと思う。今回のセッションで紹介されたテクニックは以下の9つ。映画用語として確立しているのかは未確認。
Camera Move Angle
Voice Over Narration
Image Juxtaposition
Audio Juxtaposition
Visualized Thoughts
Alterd Reality
Misdivection
Picture within Picture
Visual Storytelling
カナダ@ゲーム・デベロッパーズカンファレンス2007
カナダ大使館主催のカナダのゲーム制作ソリューションをより広くゲームデベロッパーに広め、交流を行うという趣旨のパーティー。・・・パーティーなので中に入ってしまうとそういった事はあまり感じられないのだが、何人かのソフトウェア開発者と歓談。カナダはGCツール系ではSOFTIMAGEやMAYA等主だったツールの開発本拠地はカナダにある。新バージョンのセミナーがカナダ大使館で行われるのはそういった関係があるのが大きい。個人的には歓談するならこんなド派手なクラブではなくて、もう少し静かな方が良いかなぁ・・・と思うのだが、そんなことを考えるのは日本人だけだろう。
Game Deveropers Chois Awards
カナダイベントの帰りにちょっとだけ覗いてきたが・・・こういったお祭りはこちらの方々は本当に盛り上がる。基調講演の行われたホールは2/3以上は埋まっていた。出入り口にミニバーが営業しており、ビール片手に授賞式を見るということが出来るのはアメリカならでは。Independ Games Festivalも同時開催されるので、18:30から始まり、2時間お祭りは続くらしい。
今日は比較的早めにホテルに帰ることが出来たので、コンドミニアムのキッチンで塊肉を焼いてみたり。やっぱり肉食う文化圏にきたらそれに習わなければならないでしょう。ちゃんとフライパンに収まるサイズを購入。これだけでもう、お腹いっぱい。