ジーディーシー日記 -5日目-

070304 GDC2007

カンファレンスの時間の合間を縫って、機器展を見学。規模はSIHGGRAPHよりは小さめだが、各ブースのデモンストレーションはいつもゲーム向けというのが、見て回りやすい。全体的にゲームエンジン系が多いのもGDCならでは。特にモーション関連を重点的に見学した。興味深かったものをピックアップ。

070304 GDC2007

NOVNT Technologis Inc FALGON
反発機能の付いた宙に浮いたマウスポインタといったような機器。似たようなデバイスにFHAOTOMという反発付きペン型デバイスがあるが、挙動はそれに似たような感じだった。会場では画面に表示されたオブジェクトをポインタを合わせて触るデモのほかにFPSゲームをこのデバイスでプレイすることが出来た。

070304 GDC2007

CRYTEC CRYENGINE2
キャラクターアニメーション機能でプロシージャルに移動モーションを生成するデモ画面。移動は速度に応じて細かく動きが変わる。また、地面に斜度が付くと、重心が斜面に対応するように変化するのがすごい。

070304 GDC2007
Kynogon Kynapse
Unrealエンジンを拡張する群集AIミドルウェア。

070304 GDC2007

naturalmotion
おなじみキャラクターダイナミクスツールのendorphinの他にランタイムで動くmophemeのデモンストレーションが行われていた。このツールは各アニメーション同士の関連付けを遷移図のようなネットワークを構築するようなGUIで細かく設定して、ゲーム上のキャラクタの動きをオーサリングするツール。人体のほかに馬型のキャラクタの制御のデモも行われていた。

070304 GDC2007

Natural Point TRACKIR
ヘッドセットに付けられた3つのマーカーをモニタ上に設置したカメラでキャプチャすることで、主観モードのゲーム画面の視点を変化させる。使用前には簡単なキャリブレーションを行う。2軸コントロールで頭の捻りは検出していなかった。ある意味、今回の機器展で見た最小のモーションキャプチャーシステム(笑)

Real-time Photoreal Motion Capture with Contour
MOVA というモーションキャプチャーシステムの紹介。マーカーレスでフェイシャル、クロスのキャプチャーが可能。テクスチャの収録が可能で、次期バージョンではライブ3Dプレビューが可能になるとのこと。特殊なパウダーを塗布し(見た目には全く分からない)表面に付着したパウダーのパターンを複数のカメラから収録、サーフェースを生成する。この方式は見たそのものを形状と表面情報として取り入れるので、いわゆる「不気味の谷現象」のようなちょっとした違和感を与えることもないデータを主付くすることが出来るのがセールスポイントとなるそうだ。原理は後述するUcapと同等と思われる。クロスキャプチャーはフェイシャルキャプチャー同様に生地に特殊なパウダーを塗布することで可能になるという程度で、結果はシェイプデータ以外に変換することは難しいので、ゲームでの用途は限定されると思った。
ポスト処理後のツールとして、XSI、MAYA、 3dsMAXなどに対応しており、新しいところではFaceRobotにも対応が予定されている。(まだ正式には対応していないらしい)
デモンストレーションされたフェイシャルアニメーションはリアリスティックなものだった。ゴットファーザー(EA)、エラゴン、ポーラエクスプレスなど、プロダクションでの実績も残している。
プレゼンエージョン自体は40分ほどで終了してしまい、残り時間はQ&Aに割り当てられた。フォトリアリスティックな表現が必要でかつ役者をバーチャルキャラクタ化するケースなどには有効なシステムではないかと感じた。収録データからメッシュサーフェースをどのように生成するのかそのプロセスは詳しく紹介されなかったが興味深い。

070304 GDC2007

Keynote: A Creative Vision
宮本茂氏の基調講演は今年度のチョイスアワードで今までのビデオゲーム業界における功績を称えた賞が授与されたこともあり、多くの受講者で会場はほぼ満席となった。講演の内容は過去から現在に至る任天堂と宮本氏が目指したビデオゲームのビジョンと足跡について話がされた。色々とジョークも入り、また開発の裏話などもあって、なかなか楽しい講演だった。新ハード、ソフトウェアなどの派手な話は無かったが、ゲームを制作する上での一貫した氏の姿勢の話が聞けたのは、ゲームデベロッパーにとっては有益だったと思う。ネットワーク、コミュニケーションに関して、ネットワークが発達していなかった昔でも、「ゲームの謎解きや攻略に関して、友達と情報交換をしたり、話題で盛り上がったりした経験はあるはず。これはまさしくコミュニケーションであり、こうした楽しさをイメージしてゲームを開発している。」という話が個人的にはとても印象的だった。

Final Fantasy XII Postmortem
Final Fantasy XIIのインハウスツールに関する発表。専業化に伴い各アセットによりツールの選択が異なる問題(モデルはMAYA、アニメーションは SOFTIMAGE、テクスチャはPhotoshopを使用している)、そして、市販ツールでは対応できない課題の解決のための対応として、各アセットを統合するインハウスツールが開発されている。各セクションごとにデザイナーからの要求は微妙に異なるが、共通しているのは「ゲーム画面でどのように再現されるのか、瞬時に確認したい」という点だった。背景セクションではモデルをMAYAで作成し、テクスチャをPhotoshopを使用しているが、MAYA と実機が連動してViewを変更するよう、環境が整えられており、Photoshopで編集したデータはMAYAと連動している。このようにスムーズに各ツール間が連動する環境が整えられている。アニメーションセクションでは、完成したモデルとエフェクトを組み合わせてモーションを実機で確認することが出来る。また、圧縮率をリアルタイムに変更してモーションを確認する機能がサポートされている。簡単なカーブの編集にも対応できるといった機能のサポートぶりにはアニメーションに関わっている立場として驚いた。こうした各セクションごとに専用ツールを用意することで、各セクションのアーティストが各自の作業に集中できるようになったのは大きな収穫だった半面、各作業に集中しすぎて、各セクションごとの連携がうまくいかない場合もあったそうだ。各セクションとの連携をよりうまく処理することは今後の課題となっているとの事。これらのツールは、いわゆる、ツール制作の部署という位置づけのチーム体制で開発されたのではなく、ゲーム開発の現場のプログラマが対応しているという点には驚いた。大作になるほど、そのタイトルと綿密に対応したインハウスツールは必須になるのではないかと個人的には考えているが、ゲームを作るプログラマ、ツールを作るプログラマといった考え方ではない新しい開発スタイルが興味深い。

How To Animate a Character You’ve Never Seen Before
Spore のクリーチャービルディング部分に関する発表が行われた。このゲームタイトルではユーザーがクリーチャーの姿形を自由に設定することが特徴となっている。ユーザーの設定したクリーチャーをいかにそれらしく動かすか、そのために必要なシステムとはどのようなものなのか、プログラマ向けセッションだったが、興味のある内容なので受講した。紹介されたシステムはキャラクターコンストラクションから始まり、骨の設定、アニメーションの割付けまでが可能な、キャラクターアニメーションシステムといって良いほどの機能をサポートしている。見た目はシステム開発用なので、各パラメータがCGソフトウェアのようにウィンドウからアクセスすることが出来る状態だった。ユーザーが自由に形状を設定して、それらしく動く仕組みは、各骨にどの部分の骨なのか、意味づけをすることで、問題を解決している。クリーチャーをコンストラクションする段階で胴体や足、腕、尻尾など数種類の部位に解釈されて、自動的に骨が割り付けられるという仕組みになっている。加えて揺れモノや重心の変化によって伸縮するなどのセカンダリアニメーションも適応される。セットアップされたキャラクタの骨はIKなど数種類のソルバーが自動で組み込まれえる。それぞれの長さや挙動を考慮した、計算結果によって移動量などが決められて、各ソルバーがコントロールされる。キャラクターはアニメーターが動かすものという考え方はこうしたタイトルの登場で変わっていくかもしれない。先日受講したセッション、
Athletic Performance: Intelligent Believable Charactersをみてもプロシージャルなアプローチを取ったゲームならではのアニメーション表現の登場によってゲームのアニメーションに新しい流れが生まつつあると感じた。

070304 GDC2007

会場には日本からの参加者が多く、顔見知りの方とも会うことが多い。今日はカンファレンス終了後に合流した方々とフィッシャーマンズワーフまで足を伸ばしてクラムチャウダーや生牡蠣などを堪能。アルコールも入って、閉店間際まで色々と日ごろの開発や今後の動向に関して語りあったり。こういう機会が得られるのもカンファレンスならではの楽しみだと思った。