ジーディーシー日記 2012 4日目

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会場内のGDCストアではGDCグッズの他にプログラミング、アートワーク等ゲーム開発に関連する書籍が販売されています。画集等も取り扱っているので、英語がダメでも結構楽しめます。今回はUNCHARTED3のメイキング本を購入。キャプチャーシーンがほぼ全ページ、カラーで掲載されているので、MOCAP関係者にはたまらない1冊。写真をみながらどんなシステムを使っているのか妄想してニヤニヤしますw

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●The Camera of Uncharted 3
Uncharted3のカメラ制御に関するセッションです。演出的なカメラからゲーム部分のシステマチックなカメラまで、全てのカメラ制御はゲームデザイナーが様々なアプローチでコントロールすることが出来るように、環境が整えられています。カメラの設定は、カメラポジション、画面のレイアウトを複数設定すると、そのポジション間をベジェカーブで補間される仕組みになっています。カメラの注視点も同様の方法で設定します。またDCCツールのカメラ制御のような、カメラ視点からの コントロールもサポートされています。アーティストがMAYAでコントロールしたカメラデータを組み込む方法も用意されているので、手法としては考えられるカメラコントロールのアプローチは全て用意されていると言えます。エイミングやエルードなど、ゲームプレイでカメラの挙動が体系化されている部分は、予めその仕組みが挙動するレベルからステージに合わせてカメラコントロールの調整を行う挙れですが、プロシージャルに自動制御されているので、基本的にはアーティスティックなレベルでの調整のみに集中できるように思えます。個々の機能は複雑な仕組みで動いていますが、カメラの種類に関係なく、それらをシームレスに繋ぐことができます。多種類のカメラコントロールから最適と思われるものを選択して、カメラをシームレスにコントロールするあたり、ゲームデザイナーのスキルが相当高いと思わされます。前日のバトルフィールド3のアニメーションに関するセッションも同様ですが、テクニカルアーティストに見られるような、アートとデザインの両側面のスキルをゲームデザイナーに高いレベルで要求されるように思えます。

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●Performance Capture: A Creative Primer
ゲーム開発におけるパフォーマンスキャプチャに関するセッションです。2年ほどGDC参加が空いていますが、私が知る限りではこれほどガッツリモーションキャプチャに関して取り扱っているセッションは初めてだと思います。ストーリーテリングが高いシネマティックのニーズが高くなり、キャラクタの表情をより細かく、自然なものにするために、フェイシャルだけのパートキャプチャや学術的な表情モデルをベースにフェイシャルアニメーションを半自動で生成するなど、色々な手法を検証した結果、パフォーマンスキャプチャがゲーム開発では相性が良いという見解のようです。
パフォーマンスキャプチャとはボディ、顔、手や声の演技を一度に収録するモーションキャプチャの手法です。日本でパフォーマンスキャプチャと言うと、ボディ、顔、手を収録する事が多いのですが、こちらでは顔、手、声を収録するケースが多いようです。明確には述べられていませんが、こちらのカットシーンでは広いエリアを十分に活用したステージングで演技を収録するため、細かな指先の動き等を収録するよりも、演技インパクトとして強い要素のある声と顔、体のタイミングが合っているという事の方がやりやすいと判断されているのかと思われます。もちろん、モーションキャプチャスタジオはオーディオを収録する環境としては適していないので、ここで収録するオーディオデータは、モーションキャプチャデータをキャラクタに流し込んで、カットのタイミングやフェイシャルアニメーションのリファレンスするためのものです。
フェイシャルに関しては、役者の顔そのものをゲームキャラクタとして登場させる場合は、4Dスキャン等を使用してモデルデータを取得するそうです。この際に様々な表情や局部的に顔の部位を動かしたポーズを収録して、役者毎に各部位、どのくらい、どのように動くのか 役者の表情リファレンスを作成します。又キャラクタの顔が役者と異なる場合はキャラクタモデルでも同様の表情リファレンスを作成(いわゆるキャラクタの表情ポーズを作るということですね)して、役者とキャラクタの間で同じ表情、顔の部位を動かした場合にどのくらいの差異があるのか、予め明示して、フェイシャルRIGのレベルで差異を吸収、リターゲットするといった形でフェイシャルキャプチャのデータがキャラクタに割り当てられます。こちらでは、キャラクタモデラー、アニメーター以外にキャラクタデベロップメントやテクニカルアーティスト、モーションキャプチャエンジニアといったキャラクタに特化したテクニカルスタッフが明確に存在しており、こうしたフローの構築をサポートしています。簡易的にアーティストだけでモーションキャプチャシステムが登場する一方で、既存のモーションキャプチャ手法はより高度化、専門家しているところが興味深いです。
フェイシャルを収録するカメラは、こちらではほぼイメージベースで、ヘルメットマウント型のカメラを使用するのがスタンダードになっています。この際に注意する事は均一で一定のライティングにすることで、イメージトラッキングしやすい素材を収録する事に留意する必要があるそうです。ヘッドマウントのカメラにはマイクも取り付けられており、役者のボイスも収録されます。 (これだけヘッドマウントが急速に一般化しているのに、マスプロダクツのこれらの機材を見た事が無いので、一体どこでこうした機材を調達しているのか気になるところです。)
話の後半は運用のお話です。日本で自社にキャプチャスタジオがある場合、事前準備にさほど労力をかけていないというのが現状だと思います。パフォーマンスキャプチャに限った事でなく、こちらでのスタジオでは、本番の収録までに綿密な事前準備を行っています。これは、本番ではイメージするデータを確実に収録するという事に集中するためだと思います。(この考え方はもう少し日本でも見習って欲しいと個人的には思っています。)特徴的なのはリハーサルを何度も繰り返して、キャラクターの演技デザインを行う事とテクニカルな検証を行っている事です。台本を基にキャラクターワークショップを行い、どんなキャラクタなのか、どういった動作の特徴があるのかと行った事を事前に確認を取ります。その後、2、3日のフルスタンドのリハーサル、セットを組んで技術的な問題を確認するためのテクニカルリハーサルを行います。その後本番に4〜6週間(多分相当ボリュームのあるタイトルの場合だと思います)の期間をかけるのですが、その前にスタジオ選定のために、実際にテストショットを行い収録を行う場合もあるようです。本番の収録では、マーカーカメラ以外に実際のカメラアングルから1ショット、役者毎のクローズアップ、全体を俯瞰的に把握できるアングルなど、複数のビデオカメラクルーが演技を収録します。これらはポスト処理やカットをシーン構築やフェイシャルの調整等のリファレンスに使用されます。これらを使用して、日本でいうところの簡易ビデオコンテを作成した例も紹介されました。こうした運用面のトピックは日本も大体同じで、あえてこうした内容も紹介するという事は、規模の違いはあるものの、日本のモーションキャプチャの現状と共通する課題、問題があるのかもしれません。

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お昼は俺的GDCランチの定番Mossバーガーでブルーチーズバーガー&ガーリックフライてんこ盛りを頂きました。肉汁ほとばしる分厚いパティがたまりません。カップスープも頼んでしまいました。シアワセです。ちなみにMossというのは日本のモスバーガーとは全く違うお店です。GDC初めての方に「Mossバーガーに行こう」と言うとびっくりされます。

●Contrastive Juxtaposition: Contrast and Context in BioWare Story and Cinematics
Dragon Age2と発売直後のMass Effect3を例にBioWareのシネマティック、ストーリーデザインのメソッドが解説されました。タイトルにもある通り、コントラストとコンテキストがキーワードになっています。コンテキストに関してはトラディショナルなモンタージュ理論が紹介されたり(ヒッチコックのモンタージュ理論の解説が結構面白かったです。こんなムービーあったのか。。。)カットのつながりはもちろんのこと、テーマや世界、キャラクタなど全てに関連性があり、これを上手く繋げる事でストーリーは上手く進行します。コントラストの考え方、取り入れ方が面白いです。様々な要素に対立関係を用いることで、分かりやすくストーリーを進行することが出来ます。 そのままズバリ、勢力争い、思想の衝突というのは物語として分かりやすいです。それ以外でもビジュアルアートで、明暗やカラーの違い、水平線、垂直線の構成、など上記のコンテキストと関連してアートデザインすることで、視覚的にも分かりやすくストーリーを進行させる事が出来ます。また、ステージや展開の緩急のコントロールにも関連します。こうしたコントラストをストーリーの進行に沿って並列的に展開してビジュアルやオーディオ、ストリーを構成する事でBioWareのシネマてティックが作られています。
こうした自己の理論をきちんともって説明するスキルが高い事を海外の方のセッションを受講するといつも思わさせられます。だからこそ、色々な分野で業界毎に集まってカンファレンスを開くという事が活発なのかもしれません。全てをきちんと体系化して作る事は難しいと思いますが、例えばアートデザインだけ、アニメーションだけといった個々のメソッドとしてはすぐにでも試せると思います。

●Evolution of the Cinematic Process: The Gears of War Trilogy
Gears of Warシリーズのシネマティックの変遷を振り返るセッションです。社内にシネマティックのチームが無かった状態からの変遷なので、シリーズを重ねる毎のアップデートの様が興味深かったです。
Gears of War1では30分ほどのボリュームでゲームリソースを利用したリアルタイムで再生されるシネマティックという方針は決まっていたそうです。移動の殆どない立ち芝居を基本としていますが、アニメーションのタイミングを調整すると、キャラクタ間の自然な動きではなくなってしまう、武器のプロップがおもちゃを流用したものなので、ゲームのプロップでは手のポジションが正確でないといった技術的課題やプロジェクトマネージャーやプリビズの必要性といったフロー的課題を踏まえて、Gears of War2のシネマティックの制作フローがアップデートされます。
Gears of War2では、60分のボリュームに増えて、より複雑で多くのキャラクタがシーン中に配置されたシーンが多くなりました。前作のタイミングの保持に関する問題の解決策として、予めレコーディングしたキャラクタボイスを流しながら演技を収録する方式をとりました。各ショット毎に真上からみたレイアウト図を事前準備として用意することで、キャラクタのステージ配置についてはを常に把握できるようにしました。iPadを使用した電子ドキュメントシステムも用意されています。
Gears of War3では2のシステムに若干のアップデートを加えて90分のシネマティックを制作しています。チーム体制もモーションキャプチャで収録したアニメーションデータがどの進行にあるのか、トラッキングする職種が専任になったり、バーチャルカメラを一部で利用するといったチャレンジにも取り組んでいます。3で特徴的なチェーンソーライフルがやっときちんとしたプロップを制作して収録しています。確かにあの形状はアクションや演技に関連する場合もあるので、きちんとしたプロップがあったほうが良さそうですw(Gears of War2のシネマティックに関しては2009年のGDCでも受講しています)
今後のトピックとしては、前述にもあるパフォーマンスキャプチャへの取り組みが挙げられていました。映像業界を追うような形で、ゲームのシネマティック制作でパフォーマンスキャプチャが多く利用されるような状況はすぐに来そうな気がしました。

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本日のアフターGDCは日米日本人クリエイター交流会です。4年ほど連続して開催されているそうで、今回は50人超えの賑やかな集まりとなりました。なかなか聞けない、こちらでのライフスタイル、働き方の細かなお話を聞くことが出来ました。立食形式でご飯がおいしかったです。。。。。が写真を撮るのまた忘れました。orz代わりに載せているのは帰り途中のマーケットストリートです。古い路面電車が走っていて、夜は雰囲気が良いです。