シーグラ日記2011 8月9日

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あっという間に折り返し日です。セッションが始まると日が経つのが早いですね。今日からExhibitionも始まるので、人が多くなります。SIGGRAPHの朝一番のセッションは9:00から始まります。前日は夜遅くまで遊んだり、飲んだりして、帰ってから日記もあるので、8:00までぐっすりです。そのため朝ご飯はホテルのロビーにあるスタバですませます。エレベータ降りて、出口のすぐ近くにあるので便利です。バンクーバーの市街はスタバが多いです。

●Let There Be Light
ライティングに関するセッションでしたが、表現するものによってライトの周りを取り巻く様々な要素がライティングと深く関わる事が多いという事例が紹介されており、興味深い内容でした。

・Ocean Mission on “Cars 2”
海洋の船のキャラクタに対するライティングの事例です。プロシージャルに生成される波のサーフェース上で、キャラクタ、ライトの安定したライティングコントロールを行えるように、アニメーションコントロールの環境が整えられています。キャラクタのポジションは波のフィールドをXY平面上に展開したパラメータでコントロールすると、サーフェースに沿ってポジションが動く仕組みになっています。ロールや向きも傾きに対応して変化します。船の航跡、パーティクルの発生も、この仕組みを応用して、作成されています。ライトの表現としては、ボリュームライト同士が重なることで、ボリュームが合成される仕組みが紹介されています。

・Untangling Hair Rendering at Disney
5月のFMXでも同様の髪の毛の表現を紹介するセッションがありましたが、今日のセッションではFMXではサラっと流された、髪の毛のシェーダーとライティングに関する内容でした。『塔の上のラプンツェル』では主人公のラプンツェル以外にも多数のキャラクタが登場しており、ラプンツェルに劣らず、それぞれの髪の毛の色、ヘアスタイル によって最適なライティングが検証されています。ヘア・シェーディングはシングル・スキャッタリングとデュアル・スキャッタリング(R、TT、TR、T)をコントロールすることで、基本的な髪の毛の質感が決定するとの事。これに髪の毛のおかれている状態によって、様々な要素が絡んでくるそうです。例えば、床に髪の毛が置かれている状態では、柔らかいキャストシャドウが床面に発生するため、これを考慮したライティング、シェーディングコントロールが必要になります。キャラクタは様々な背景におかれるため、テスト段階では不ストーリーに出てくる様々なシーンを想定してシェーディングのテストが行われます。また、背景の状況から起因するライト、例えば、暖炉の炎や蝋燭の光、他のオブジェクトからのバウンスライトを考慮したライトコントロールが必要とされます。こうした様々な要素を総合的にコントロールすることで、存在感のある特徴的なヘア表現が作り出されていると言えます。がっつりと髪の毛の表現を出発として、ライティングに考慮されるべき様々な要素が紹介されていたのが良かったです。

●Walk the Line
MOCAPの運用を担当している部署にいるので、収録したデータをライブラリ化して運用するというような構想は、浮かんでは消えてを繰り返しています。その要因の ひとつとして、大量のモーションデータからどうやって目当ての動きを検索するのか?という事があげられます。モーションキャプチャのデータには、走る、ジャンプするといった言葉で表現する動きが多く存在しますし、またモーションキャプチャデータを素材としてみた時に、欲しいポーズや状態が必ずしも、従来のワードによる検索から導きだすのが難しいという問題があります。このセッションでは動き、ポーズなどをどのようにコンピュータに認知させて活用させるか、新しいアプローチが紹介されています。

・Motion Comics: Browsing and Searching for Human Motion Data
ステティック・フィジュア、いわゆる、丸い頭に棒の体と手足を付けた人型の絵柄でモーション中にある同じポーズを検索するというものです。モーションキャプチャデータは、各部位のスピードの抑揚を参照してサムネイルを作成しています。検索の対象はこのサムネイルになります。急激に変化するような動きの場合は、漫画の効果線や軌跡が加えられ、どの方向から動いて、サムネイルのポーズに到達しているのか、静止画でも認識できるように工夫されています。スケッチされた絵柄はどの部位位に相当するか認識されて、ジョイントが割り当てられます。このジョイントに変換されたものと同様に変換されたモーションキャプチャデータが参照されます。非常に簡単な入力で検索できるという点で、アニメーションデータベースでの活用は効果的ではないかと思われます。プロダクションでの使い方にも向いているのではないでしょうか。

・Multiperspective Rendering for Anime-Like Exaggeration of Joint Models
ジャパニメーションのような誇張、意図して歪んだパースでポーズを表現する、レンダリングアプローチです。モチベーションで「金田パース」 の話が出てくるのが、年代的にツボにはまっていますw これまで同様の表現を行うアプローチとして、オブジェクトを局部的に変形させる手法がありましたが、ここで発表されたアプローチは、カメラのポジションと各部部位毎の奥行き状況を見て、個別にパースを変えてイメージを計算、1つのイメージにレンダリングするというものです。ARへの応用例も紹介されており、計算コストはそれほど大きくないようです。もちろん、ゲームへの応用も可能ではないかと思われます。

・Learning to Classify Human Object Sketches
描いた絵を解析して、それが何なのか言葉で出力する技術です。イメージを部分的に区分けて、データベースから相似するイメージを検索酸して、ワードを導きだすといった仕組みです。上記のMotionComicも同様ですが、検索する為の検索データベースを用意するというのが、近年のDataDrivenネタでは多いようです。この手の図形検索では、絵の上手い下手の境界線をどこに設定するか、抽象的なものをどのように扱い、今までとは違った表現が出来るのかと行った事が課題となるような気がします。

そして、でっかいチキンが乗ったサラダなう。

恒例?今日のごはんです。@kaoruさんからコンベンションセンターすぐ近くのフードコートを教えていただきました。盲点というか、コンベンションセンターのすぐ前のビルの地下にありました。(このビルの観光案内所には初日に行っているのですが、気付きませんでしたorz)LAのようなフードコーナーが無いので、昼食をどうするか苦労していたのですが、残りの日程はこれで間に合いそうです。本日は葉っぱが足りないなぁと思い、シーザーサラダを注文したのですが、でっかいチキンが付いてきました。

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●DreamWorks Animation: The Yin and Yang of Creating the Final Battle in “Kung Fu Panda 2”
『カンフーパンダ2』のプロダクションセッションです。全体的な流れは先日の『マイティ・ソー』 『キャプテン・アメリカ』と同じで、ブレイクダウン映像を流しながらのトークですが、今回はクライマックスシーンに的を絞って、各要素について、プリプロダクションから完成までの段階を解説しています。

・ラストバトルの各ショットで各キャラクタがどう戦うか詳細にデザイン。
・沢山のイメージボード、ランドスケープを検証する為にジオラマも作成。
・当初ロケーションは広大な荒野が検討されていた。
・「火と水」のテーマでロケーションが変更になった。
・カラーデザイン:ポーや仲間達のキーカラーはゴールド
・カラーデザイン:敵役のピーコック、狼のキーカラーは赤 。
・例えば、敵役のキャノン・ボートや敵役には赤のライティング。
・火と水の対比も同様。敵役がキャノンに象徴するように火であれば、ポーは水。
・舞台での立ち位置にも対応している。
・逆にポー達が活躍する場面の要所でゴールドが使用されている。
・キャノンが発射した弾は赤、ポーが受け止めて返すと弾はゴールドになる。
・キャラクタ毎にライトを設定。キャノンは青いライティング。
・Goodキャラはカラフル、Badキャラはニュートラル(無彩色)。
・ キャノンの発射のデザイン:これもペインティングでイメージを検討。
・煙、マズルフラッシュ、炎、弾の動き等各エレメント毎にデザインを検討。
・破壊のデザイン:キャノンのインパクト、風圧と炎で吹っ飛ぶような壊れ方。
・キャノン・ボートの破壊は発射口に投げ返した弾が詰まって暴発した勢いで船体が折れるように壊れる。
・ポーの弾を受け流して返す動きも色々検討。

この作品に限った事ではありませんが、こちらの大型案件では徹底的にプロプロダクションを行い、イメージのコンセンサスを取る為事から、チャレンジな要素について多くの検証を行うといった印象が強く感じられます。この点はセッションでも述べられていました。

●Call Animal Control!
バイペットコントロール以外のモーション生成は興味深い分野です。使用される頻度としては圧倒的に2足の人型のキャラクタが多いのですが、4足やクリーチャーなど、人とは違う動きをするキャラクタはアニメーションさせる機会もあります。圧倒的にNPC的な役割に多いものなので、アニメーション作成の効率化という課題を飛び越して、自立、自動生成で表現するというのもありなのかもしれないと思うことがあります。

・Articulated Swimming Creatures
魚、カエル等の関節モデルを使用して、架空のクリーチャーの泳ぐアニメーションを生成するアプローチです。元々の関節運動は周期的なもので ジョイントのアニメーションを基に流体のスイム・シミュレーションを行い、ジョイントのアニメーションを最適化しています。最適化はオフラインで行われています。

・Locomotion Skills for Simulated Quadrupeds
四足動物(犬)の物理ベースシミュレーションです。足取りとスキルを統合したセットによってコントロールされます。現状では、歩き、駆け足、座り、立ち、横移動、ジャンプ等が可能です。ジャンプによって離れた地面に飛び移るような動きもデモンストレーションで紹介されました。動物のアニメーションを作成する場合、現状では手付け、或は可能なケースではモーションキャプチャのアプローチがありますが、こうした周期的な運動をシミュレーションを使用して、現実的な動きとして生成するというアプローチが選択肢に加わると、現在ある手法の不得意な点を補えるのように思えます。

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本日のアフターSIGGRAPHはHoudiniユーザーミーティングです。コンベンションセンターから地下鉄に乗って3つ離れたエリアのギャラリーがユーザーミーティングの会場です。ギャラリー貸し切りでユーザーイベントとは、相変わらず個性的なロケーションをチョイスしています。トピックはHoudini12の説明。特に大きな機能変更は無く、色々な面で省メモリ化、高速化が図られています。マルチスレッド化もかなり進捗が進んでいるようです。これで「遅いHoudini」のイメージが払拭されるかもしれません。。。(とはいえ、全体的に先走りな事を取り入れる多いHoudiniなんですよね。。。)ユーザー事例は、R+H、BlueSkey、そしてPixarです!PixarはCars2のクラウド表現でHoudiniを使用しているとのこと。こまごまとしたプロジェクトに特化したカスタマイズ環境も紹介されました。ペイントスタイルのクラウドレイアウトシステムがかっこ良かったです。

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ユーザーミーティング終了の後は例の如く、会場がクラブハウスに変身ですw 少し歓談して明日もある事なので早々にホテルに戻りました。それでも22:00って。。。普段より夜更かししすぎてます。