シーグラ日記2011 8月10日

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SIGGRAPHも4日目です。日記を書くので寝るのが遅くなってしまうのですが、レッドブル500mlロング缶のおかげで、いまのところ疲れ知らずですwこっちのレッドブルは本当に羽が生えたかのような効き具合です。連日のSIGGRAPHで疲れた方にはお勧めです。写真はWest会場の廊下の様子です。通路が広いのでセッション終了後に混み合う事が無いのが良いです。また、良い景色を見ながらソファーに座って休憩したり、ネットに接続して調べものをするといった過ごし方も出来ます。

●Mixed Grill
セッションの構成が本当にミックスグリルでしたw どういう 関連でセッションが構成されたのか、受講したら余計に分からなくなりましたw そんな構成でもお目当てにしていたセッションは期待していた内容でした。

・The Power of Atomic Assets: An Automated Approach to Pipeline on “Legend of the Guardians: The Owls of Ga’Hoole” 
『ガフールの伝説』制作における大規模アセット環境に関するセッションです。2007年に制作開始、2010に完成。600人規模の制作体制、196000アセット、400,000,000アセットファイル、アセットの容量が476TBという、巨大規模体制で効率的にアセット管理を行う為に様々な仕組みが構築されています。アセットはファイル単位では無く、プレビズ情報やレイアウト、オブジェクト、アニメーション、マッスル等様々な要素をショット単位でパッケージ化した状態で管理されています。ライティングやアニメーション、レイアウトといった専門分業の体制とはいえ、実際にはキャラクタの動きに連動したエフェクト等、それぞれの要素が綿密に関係するようなケースも考えられるので、ショット単位でのパッケージ化は制作の流れ的に管理しやすいと思います。アセット管理ツールはExcelシートに階層構造を持ったようなインタフェースになっており、パッケージを構成する書くアセットの情報を参照できるほか、スケジューリングや業務連絡の機能も備えています。アセットの完成や段階の終了をトリガーとして、リマインダを送信するといった使い方も出来そうです。

・Animation Workflow in Killzone 3: A Fast Facial Retargeting System for Game Characters
『キルゾーン3』 のフェイシャルアニメーションの事例紹介です。キルゾーン3のシネマティックのキャラクターアニメーションはモーションキャプチャデータをベースとしています。フェイシャルもモーションキャプチャベースです。大量のフェイシャルキャプチャを効率的にキャラクタに当てはめる為に様々な工夫がされています。フェイシャルデータは抽象化することで、オートマチックに読み込んだモーションキャプチャデータをリターゲットして、キャラクタの顔のメッシュに最適化します。フェイシャルキャプチャのマーカー口の周りを円周状に取り囲みながら、グリッド状に展開するようにレイアウトされています。リターゲットする顔のメッシュは、メッシュトポロジ、ウェイトを各キャラクタで共通化しています。メッシュの状態を共通にする事で、リターゲット等の自動化をシンプルにコントロールすることが出来ます。リターゲットされたフェイシャル・キャプチャデータは直接メッシュを移動するのではなく、フェイシャルRIGに組み込まれたマッスル・システムをドライブしています。こうする事で、役者の顔立ちに依存する動きから破綻する事無く、キャラクタの顔立ちで表情を再現することが出来ます。このようなマッスルシステムを利用したフェイシャルワークフローはゲームタイトルではまだ採用している事例は少ないと思います。

●Example-Based Simulation

・Data-Driven Elastic Models for Cloth: Modeling and Measurement
布の縦方向、横方向の伸縮具合を測定してデータベースとして、クロスシミュレーションを行っています。現在の大半のクロスシミュレーションは縦横の伸縮に関して、等方性の弾性モデルを使用しているものが多く、そのため、布としての最大公約数的な表現は実現されているものの、布の種類毎の詳細な挙動に違いを表現する事が出来ません。対して、この手法では各素材の特性に関してその素材自体から参照しているので、より素材感のあるクロスシミュレーションが実現できるとの事です。

・Frame-Based Elastic Models
物理シミュレーションによる変形とスキニングよる変形の特性を持った新しい変形モデルです。ボーンをセットアップする事無く、ボーン変形のように形状を変形させてつつ、弾性モデルのような挙動を自動的に生成します。局部的にリジット・モデルに定義する事も可能です。

・Example-Based Elastic Materials
Example-Baseのメッシュ変形に対して、弾性モデル変形のような挙動を加えたような表現が出来ます。Example-baseの変形は通常状態のレストポーズに対して、目標となる変形状態をユーザーが明示することが出来るため、例えば弾性シミュレーションのようにシミュレーション中にメッシュの形状をコントロールできないという事がありません。風船人形の局部を圧迫すると、空気が移動して動くといった現象を簡単にコントロールすることが出来ます。コントロラブルなシミュレーション表現は、近年の映像業界にみられるトレンドと言えます。

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昼食はホテル前の初日にサンドイッチを買った屋台で、今度はライスBOXを試してみました。肉炒めかけバターライスと行った感じでしょうか。箱からフォークで食べるのは、アウトドアで袋飯で慣れているため、抵抗はありませんでしたが、食べにくいです。お味の方はご飯にもうちょっと塩っけ&脂っ気が欲しかったかな?と思うくらいあっさりしたお味です。

●Facial Animation

・Leveraging Motion Capture and 3D Scanning for High-Fidelity Facial Performance Acquisition
高精度で動的な皺を表現したフェイシャルキャプチャー手法です。3Dスキャナと光学式システムの良い部分をハイブリッドにしたようなイメージです。リファレンスとなるポーズを決めて、対応する3Dスキャナで取得した高精度のメッシュとモーションキャプチャデータを関連付け、オプティマイズします。皺の表現はメッシュだけでなくイメージデータを基にしてディスプレースメントマッピングを行っています。

・Interactive Region-Based Linear 3D Face Models
PCA線形モデルを直感的にコントロールする手法です。線形モデルのブレンドシェイプは各パラメータに意味合いを持たせる事が難しいのですが、この手法は線形モデルを使用しながらも、サーフェースの局部を指定してマウスオペレーションで動かす事で、意図的な操作を行いつつ、関連する複数のパラメータを一度にコントロールすることが出来ます。ある意味存在する役者のフェイシャルRIGという見方も出来ますが、例えば、この仕組みを事前に作成しておいて、ビデオイメージベースのモーションキャプチャと連動させる事で、2Dデータだけで奥行きへの移動も含まれたフェイシャルデータを生成するという事も可能かもしれません。

・Real-Time Performance-Based Facial Animation
キネクトを使用したリアルタイムのフェイシャルキャプチャシステムです。キネクトの3D/2Dデータを使用しています。キネクトのZカメラは詳細なサーフェースを取得する事は出来ませんが、奥行き方向を持った3D情報であるため、イメージベースのように顔の向きがどちらを向いているかは検出できないという事がありません。キャリブレーションは正面を向いた状態で、キネクトの3Dデータにテンプレートのフェイスモデルが重ねられます。イメージデータも基にして、目、口の位置を検出します。イメージベースで目、口のトラッキングを行いつつ、3Dデータから算出された、顔の傾きや向きと合成され、テンプレートのフェスモデルが更新されます。3Dと2Dを組み合わせる事で、キネクト1台から取得したとは思えない出力結果を得る事が出来ます。

●Crowds

・Crowds on “Cars 2” 
前日のHoudiniユーザーミーティングでも紹介された『Cars2』の群衆表現に関するセッションです。内容はユーザー会より広い範囲に及んでいます。大量に出てくる車キャラクタの群衆は、日本、イタリア、フランス、イギリス、それぞれの国に見られる車のカラーリングの傾向を 調査してカラーリングの割合が決められています。バリエーションは500種類以上。LODは車の形状からボックス型までシュリンクワープという手法で、いくつかの形状に段階的に変形されます。群衆のレイアウトはHoudiniが使用されています。ペイントライクな手法で群衆を配置する環境が構築されていました。道路を信号等の変化に対応して動く表現はMassiveが使用され、交通状況をブレインが判断して、アニメーションがコントロールされています。

・Synthesizing Complexity for Characters and Landscapes in “Rio”
『RIO』の群衆表現には後述するボクセルによる手法と十字ビルボードによる2つの手法で表現されています。十字ビルボードはビデオゲームでは木をどの角度から見ても立体的に見せる為の手法として、よく使われていましたが、この作品では大量に登場する人の群衆表現に使用されています。大量かつ多種類のクラウドキャラクタを表現する為に、群衆アセット・データベースが構築されています。キャラクタを選択すると、バリエーション、演技内容をプルダウンで選択することが出来ます。また、UIでコピーする事が可能で、個々の動きのタイミングをどのくらいオフセットするか、カーニバルのシーンのために、ビートの設定項目もサポートされています。

・Staging Carnival: Ray Tracing Crowds in “Rio” 
もうひとつの群衆表現の手法として、カメラとの距離を参照してボクセルキューブの大きさを動的に変更するアプローチが使用されています。ビルボードによる表現は、群衆とカメラの配置にあまり大きな変化が無いケースでは有効ですが、奥行き方向への移動を伴うカメラアクションでは、動的にディティールを変更することが出来る、ボクセルの方が有効と思われます。キャラクタに限らず、遠景の樹木等でも使用されているようです。

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●SIGGRAPH Dailies!
Technical Paper Fast Fowardの映像制作版です。ビュアライゼーションから学生作品、プロダクションワークまで、様々な映像に関するトークが、1スピーカーあたり3分ほどでどんどん回されます。昨年、企画されて好評だった事もあり、会場は立ち見、座り見(本人達曰く、こうやってリラックスして見るのが楽しいのだとか)が沢山出るほど会場は満員でした。これ、日本でやっても面白いかもしれません。

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本日の晩ご飯はバンクバーで美味しいと評判のKEGへアルバータ牛のでっかいステーキを食べに出かけました。頼んだのはリブステーキ16ozベイクドポテト付き。赤みの強いお肉がとてもおいしかったです。もうちょっと大きくても良かったかなぁ。。。