最終日です。あわててExthibtionを見て回ります。全体的な印象としては、全体的にぎゅっとシュリンクされたような感じで、通路の間隔が狭くなっています。仕事柄、モーションキャプチャ、アニメーション関連を見て回るのですが、昨年との違いがあまり感じられない機器展示でした。
●Emerging Technologies
この分野では日本の大学から多く出展されています。発想がとても面白い物があり、いつも楽しみにしています。
・InteractiveTop: An Entertainment System that Enhances the Experience of Playing with Tops
回転しているコマを直感的なユーザーインターフェースで誘導することが出来ます。テーブルプロジェクションで状態をインフォメーション表示します。コマ同士の衝突によってデバイスにも触覚的なフィードバックが返されます。近未来のコマ遊びみたいです。
・Recompose -Direct and Gestural Interaction with an Actuated Surface
両手を使って直感的に3次元のサーフェースを操作する インタフェース。両手で区切られた面で操作の範囲を選択して、親指と人差し指でつまむようなジェスチャーを行うと、ピンが上下します。ピンの動きだけでも面白いですね。人の手の動きがダイレクトに操作する為の数値に変換されている感じは、何かインスタレーション的なものを感じます。
・FuwaFuwa: Detecting Shape Deformation of Soft Objects Using Directional Photoreflectivity Measurement
LEDと受光センサを組み合わせて、ぬいぐるみの中身に掛かる圧力をデータ化しています。圧力をかける部位毎に異なる音が出たり、圧力を掛けた方向に目玉が向いたり、ゲームデバイスとしても使用したデモが行われていました。センサはシンプルなので、ぬいぐるみの中に仕込むだけで、それほどデリケートな扱いも必要なさそうなので、玩具への応用が出来ると面白そうです。
・The Virtual Crepe Factory: 6DoF Haptic Interaction with Fluids
流体の触覚を感じることが出来るHapticデバイスです。クレープの生地、シロップなど粘性の異なるものとの触覚フィードバックが異なります。自分は上手く焼けた気がしなかったですw
SIGGRAPH最後のお昼ごはんです。SamDimCombo 7$です。East会場を通しすぎた少し先の路上の飲茶屋台です。肉シュウマイ、海老蒸し餃子、焼きそば、そして豪快にドカンと乗っかった、ガーリック味の菜っ葉がインパクト大です。ボリュームがあるので、小食な方はシュウマイだけとかもオーダー可能でした。
●Heads or Tails
本日の事前チェックのセッションはこれだけです。Modular Rigging in Battlefield 3が直前でキャンセルになってしまったのが残念です。RIG関連でまとめられたセッションは今年は以外と少ないと感じました。
・Building the Birds of “Rio”
『RIO』に登場する鳥のキャラクタ達のRIG関連のセッションです。例の如く数多くのプリプロダクション段階のキャラクタスケッチが紹介されます。この作品に登場する鳥達は、形状こそ鳥の姿ではありますが、演じ方は人間に近いもので、身体的な特性は人の手足、指に相当する部分がスタイル化されています。羽は飛ぶための羽であり同時にボディランゲージのための指にもなります。リアルな鳥の骨格とRIG骨格を比較すると一目瞭然です。翼であると同時に腕の役割も果たす為に、実際の鳥の翼は広げた状態でも、骨は適度に曲げられて状態になりますが、RIGでは翼のサーフェースに対してまっすぐに入っています。丁度人がTスタンスを取っているような状態です。
大きな羽には細かくジョイントが仕込まれ、コリジョンやベントコントロールで羽自体が変形する仕組みが組まれています。これで指の表現やグランドとのコリジョンによる変形を表現しています。細かな羽や全体的なシェイプをコントロールする為に、全ての羽が テンプレートサーフェースに追従する仕組みになっています。羽のロールやローテーションも自動で補正されます。本来の鳥の羽としての表現、キャラクタとしての羽の表現を両立する為にコントローラが通常の人型キャラクタよりも多くなっているため、各状態、部位毎にレイヤーが分かれて管理されています。
・”Kung Fu Panda 2″: Rigging a Peacock Tail
こちらはクジャクのキャラクタです。基本的な羽のコントロール要素は同じですが、カンフーの達人という設定で、羽の変形がよりスタイライズされています。またクジャクの特徴である広げた羽は100本の骨を長さ毎にレイヤー分けして、全体的な形状の変化や動きはパラメータでコントロールできるようにRIGが構築されています。羽の長さが長いため、ユラユラ自動で動く仕組みになっています。これはダイナミクスではなく、ノイズ的な手法がとられています。
『RIO』も『Kung Fu Panda2』 も事前にキャラクタとしてどのような動き、ポーズの表現があるのかリサーチを行い、そこから表現を実現するための技術検証が行われているのが印象的でした。どうしても人型のキャラクタが多くなってしまいがちですが、様々なキャラクタをデザインする事を想定して、こうしたプリプロダクションを行う事はRIG設計の上で重要な事だと改めて思いました。
・Optimized Local Blendshape Mapping for Facial-Motion Retargeting
予め沢山の表情を目や頬、口、鼻など各部位毎に分解しておいて、モーションキャプチャデータを基に、近似するポーズを組み合わせて表情を生成する手法です。異なる顔でもマーカーリターゲットする事無く、フェイシャルキャプチャをキャラクタに割り当てる事が可能になります。例えば、架空のキャラクタの場合、メッシュの変形で想定される様々な表情を作成しておくと、MOCAPデータを読み込んだ結果がアーティストのイメージに近い表情になります。フェイシャルキャプチャの課題として、役者の顔の形状と著しく異なるキャラクタの場合、マーカーの動きが役者の顔に依存するため、イメージした表情変化が得られないケースが考えられます。前日のKILLZONE3の事例ではMOCAPデータがマッスルモデルをドライブするアプローチでキャラクタの顔に最適化しようとしていましたが、キャラクターアーティストの表情へのこだわりが強い場合は、こうした手法が向いているのかもしれません。個人的には日本の作り方に向いている印象を持ちました。
●Capture and Construction/Data-Driven Bird Simulation
鳥のRIGネタが続いたので、シミュレーション系だとどんなアプローチになるのかな?と思い、急遽このセッションだけ湯こうしました。鳥の運動をシミュレーションして動きを表現する事例、論文は以前にもありましたが、この論文では、近年の映像業界の傾向に見られる、コントローラブルなシミュレーションに留意したアプローチを模索しています。
データ・ドリブンという事で、いったいどうやって実際の鳥の動きをデータ化するのか、興味津々で聞いていたのですが、ストレートに光学式モーションキャプチャを行っていました。補助的にハイスピードカメラでリファレンス・ビデオも収録しています。 データは27cmの鳩の羽体の要所部分にマーカーを取り付け、500〜2000FPSのフレームレートで収録されています。人の動きを収録するよりも若干早いレートになっています。ポスト処理されたデータは240FPS、動きが速い為に、このくらいの密度が必要になったようです。収録した関節の運動はパラメータ化されて、前方方向へ進む力とバランスコントロールの要素を組み合わせています。前述の『RIO』や『Kung Fu Panda 2』に登場するようなキャラクタ化された鳥よりは、より実際の鳥に近いキャラクタや群衆のコントロールに向いた手法ではないかと思いました。
最後のアフターSIGGRAPHはバンクーバー初日に行ったJoe Fortesです。またまたハッピーアワーのバーカウンターで乾杯です。せっかくなので生牡蠣も頂きました。色々な産地の牡蠣がセレクトできます。
これで今年のSIGGRAPHは全て終了しました。今年は日本のゲーム開発分野の方が多く参加しているな、という印象を持ちました。セッションでもビデオゲーム関連のセッションが目に見えて多くなったなと感じられました。しかし、ゲームライクな技術発表に対して、開発者の視点から見ると違和感があるように、ビデオゲームのプロダクションセッションを研究者が見て違和感を感じる部分があると思わされる部分がありました。SIGGRAPHというカンファレンスの中で、どのように他の分野と解け合って行くのかは、まだまだこれからといった印象です。