シーグラ日記2008 8月11日

本日からSIGGRAPHのセッション開始です。会場は人、人で賑やかになってきました。今回は初日からアートギャラリー(Slow Art)やNew Tech Demoなどが開いています。イベント系も色々です。

●FJPRG!
料理の鉄人 CG版と言ったところでしょうか。36時間以内に一番Coolな映像を作ったチームが勝ち、という単純明快なルールです。制作期間中は夜中でも自由に観戦可能のようですが、夜中にいく人っているのでしょうか??鉄人たちの仕事っぷりはモニタでチェック可能。ちゃんと3人のモニタを切り替えてみることができます。運営スタッフはみんなバイキングのハットをかぶって、会場で練り歩き、「FJPRG!」と騒ぎながらステッカーを配って宣伝していました。あさってには結果発表イベントもあります。

●GREAT FAILED IDEAS IN PRODUCTION
プロダクションの大失敗例を期待していましたが、日本で言うところの失敗例とは少しニュアンスが違っていました。パネリストにはRhythm & HuesやIndustrial Light & Magic、Pixar Animation Studios といった大手スタジオが勢ぞろい。大失敗というよりは、「オーバークオリティ」「やり過ぎ」といった感が強い例が殆どでしたね。ハードの進化もあって、シミュレーションを多用する傾向が強くなっていますが、必ずしも、シミュレーション結果がイメージしているものになるとは限らない、という事例が多かったように思えます。
かつては、少ないパワーソースでいかにそれらしく見える様に作るか、アーティストの観察力とCGとしての落としどころをセッションで多く見ることが出来ましたが、こうしたシミュレーションを活用した事例では、作り手が意図したコントロールをする事が難しくなっているように思えます。こうした背景もあってか、最新の映像清濁事例などでは、ダイナミックスなどのシミュレーションを使いつつも、アーティストがコントロールできるような、ハイブリッドな環境を提供している傾向が強く見られました。

●3D for Gaming and Alternative Media: How 3D is Changing the Way We Play
3Dシネマを見ながらの事例紹介がある、ということもあり、開場前から長蛇の列でした。日本以上にステレオ3Dに対する関心が大きいように思えました。

・The Power of 3: An Insider’s Look at Stereoscopic 3D Gaming
PC ゲームの3D表示でバイス事情が紹介され、描画のコストが高くなるという課題はあるものの、開発のしやすさやデバイスの低価格化により、PCゲームをステレオ3Dで楽しむ市場の条件はそろいつつあると述べられていました。実例デモンストレーションで UrealTornament2008のステレオ3Dプレイがリアルタイムで行われました。大画面でスムーズに動くゲーム映像はかなりインパクトがあります。日本ではハイスペックゲームコンソールの魅力を共感してもらえるために、苦労していますが、HDモニタの映像の優位性に加えて、こうした新たな切り口で映像に対する新しい感動を提供する事が鍵になるのかもしれないと思いました。

・Production of Live 3D Content for Broadcast
ライブ映像におけるステレオ3Dコンテンツの事例も紹介されました。現在ではリアルタイムにステレオ 3D映像を生成、配信する事が可能になっているのです。実際にカメラシステムを会場の外に設置して、セッション中にパネリストがカメラを通して講演するといった面白いプレゼンテーションを行ってくれました。カメラシステムは2つのカメラの間隔をリアルタイムで可変、奥行きの調整もその場で可能と柔軟にライブ映像に対応できるようになっています。このシステムで収録されたライブ映像の上映が行われましたが、単なる映像上映には無い、臨場感を感じることが出来ました。今までのライブ映像には無い、付加価値のあるコンテンツとして確立する可能性があるかも。

・Designing Theme Parks in the Virtual World
インタラクティブ・メディアのもう一つの事例として、ディズニーのトイストーリーライドの事例が紹介されました。テーマパークのライドアトラクションで、トイストーリーのキャラクタたちが案内役になって、輪投げや、ベースボール・バスケとなど昔ながらの屋台型のゲームを遊ぶといった内容です。ゲーム映像がステレオ3Dとなっています。
乗り込むライドには大砲型のコントローラがあり、これを操作して3Dステレオの映像でゲームをプレイします。発射された弾はゲーム映像。弾が当たったフィジカルなエフェクトは画面からの飛び出し感が強く、セットと連携した挙動で現実感をより強めています。ゲーム部分を CGにした事により、Hollyday Overlay、例えば、ハロウィンバージョンなど、期間限定のコンテンツに変更するなど運営での利点もあるそうです。この手のテーマパークライドは日本国内ではめっきり減ってしまった感じがありますが、最新の技術によって、今までに無い、面白いコンテンツを提供できる可能性を感じました。
このセッションで、ステレオ3Dに対するイメージが個人的に大きく変わりました。日本国内でも裸眼立体視の技術など新たな技術が開発されている状況もあり、これからのコンテンツの表現手法としてステレオ3Dも十分検討できるのではないかと思いました。