シーグラ日記2008 8月10日

今日は丸一日SANDBOXでした。SANDBOXとはACM SIGGRAPH VIDEO GAME SINPOSIUMの愛称で、2006年よりSIGGRAPHの開催前に行われています。今年で2回目の参加となりますが、参加人数は昨年より増えているような印象です。内容はCGにとらわれず、ゲームデザインやプロデュース、教育など多肢に渡っている点がSIGGRAPHと異なります。今年は論文のボリュームが増しています。

●Papers I – Secret Agents: AI, Game Agents and Databases
・A Spatial Awareness Framework for Enhancing Game Agent Behaviour
地形に対するAIのパスフェインディングの生成方法。VonoroiグラフとMedical Axisを使用している点が新しいようです。パスファインディングした結果をバトルゲームやレースゲームに応用した簡単なサンプルも提示されました。
・Declarative Processing for Computer Games
SQLを使用して、スクリプトコントロールをする試み。クリプトの状況判断をSQLを使用する事で、高速に処理することが出来るメリットがあるとのことです。デバックが複雑になりそうだという、課題もあるようですが。こうした思いもよらないツールの使い方が発表されるのも、論文発表ならではで面白いです。

 

●Papers V – Architecting Navigation and Behavior
・Integrating Video Games and Robotic Play in Physical Environments
子供向けのコンピュータプログラミング教育のツール。コードを書く事無くマーカーとカメラ、コンピュータビジョン処理によって、リアルタイムにロボットを制御するというもの。マーカーを動かしたい順番に並べて、フィールドに並べて制御するあたりはブロックで箱庭を作っている感覚に近いです。そのほかに、プロジェクタからの投影映像とインタラクションする仕組みのコンテンツも紹介されました。ビデオゲームというよりはSIGGRAPHに出品されている、NewTechDemoの作品に近いかなと。ハードとソフトウェアを組み合わせたラーニングゲームの例として紹介されていました。

 

●Panel II – Four views of procedural character animation for computer games
4 人のモデレータからそれぞれ、プローシージャル・キャラクター・アニメーションの事例が紹介され、最後にディスカッションといった流れ。
事例の1つ目はAIのパスファインディングとフット・ステップ(足跡を配置するだけで歩きモーションを生成する)を組み合わせて、キャラクタの感情状態によって、それらしい動きを自動生成するといった研究。最近になってゲーム開発でプロシージャルの事例が紹介されていますが、キャラクタ分野でプロシージャルというと、こういった例を連想する場合が多いかと思います。こうしたアプローチを追及していくと動きカーブじゃない、より概念的な数値で動きを表現する、ということも、アニメータのスキルとして求められる場合もあるかもしれません。
2つ目の事例は、TORIBASHというインディーゲームの紹介。海外のタイトルだがGameWatchで紹介されています。各間接の緊張、脱力のタイミングを設定する事で、ラグドールがフィジカルに動きます。。間接の力の入れ具合のみのコントロールなので、簡単なキックを行わせるだけでも、バランスセンスが求められます。こうしたままならない動きにキャラクタ同士のインタラクションが加わる事で、動きの表現として面白いものになっていると思います。既存の格闘ゲームと比較するものではないと思いますが、技をユーザー自身が組み立てることができるという点で、格闘ゲームの動きのUGC(ユーザー・ジェネレート・コンテンツ)を実践的な試みの1例として挙げられるんじゃないかと思います。でも、こういう発想のものは日本では、なかなか出てこないですね。
3つ目の事例では、蟻のAIモデルの事例が紹介。蟻塚を AIで自動生成するためのアプローチがどのようなものであるか紹介されました。紹介された中では、比較的純粋なAI研究に近いイメージ。
最後の事例として、プロシージャルの集大成ゲーム、SPOREのキャラクタービルダーが紹介されました。今回の紹介では、キャラクタビルディングと動きの自動生成の部分に焦点をあてた内容でした。あまり技術的な部分には触れず、キャラクタを自由に作る仕組みをユーザーに提供したことによって、設計者が考えもしなかった、クリーチャーが多く生まれている、ユーザーの想像力の可能性について述べられていました。ちょっと自慢話的でありましたが。
以上の4つの事例を見ると、プロシージャル・キャラクタ・アニメーションには、動作自動生成、ダイナミックス処理、AI、UGC(ユーザー・ジェネレート・コンテンツ)の4つの方向性を見いだすことが出来ると思います。残りの時間で、これらの4つの方向性に関して、なにかしらの議論展開があると期待していたのですが、少し盛り上がりに欠けた議論内容で終了してしまいました。しかし、「プロシージャル・キャラクタ・アニメーション」というものが取り上げられている研究現場の状況や、今回、事例として紹介されたものに見られる方向性など、参考になる事、キーワードを得ることが出来たと思います。

 

●Papers VII – 3-D and Cinematography: Making Games Come Alive
・Virtual Cinematography of Group Scenes using Hierarchical Lines of Actions
この内容は期待していたのですが、現状ではキャラクタの立ち位置は固定、カメラも固定と制約の多すぎる内容。Inゲーム・シネマティックやゲーム・シネマティックスをクリプトなしに半自動生成するというアイデアは実践でもニーズがあると思います。フィールドを自由に動き回るようなゲームタイトルでは、どういった方向、状態、スピードからNPCにインタラクションするか予想できない事が殆ど。これをシームレスに繋げる事ができる事ができれば、表現の制限が少なくなります。
実用的なレベルにするには、カメラフレーミングをキャラクタの状態から調整する技術やキャラクタの動きの自動補正、AIなど、前述したプロシージャル・キャラクタ・アニメーションのいくつかの方向性を複合的に研究する必要がありますね。今回の内容は個人的には物足りない内容に終わってしまいましたが、このような、ゲームならではの表現を実現するため研究は今後の動向に期待したいと思います。
そして、最後に脈略無く、今晩の夕食内容です。ごく1部ですが、なぜか、このBlog記事をアメリカ食事事情レポートと思われている方がいらっしゃるので。。。昨晩が強烈だったので、今日は軽くしましょうと言っておいて、この様です。野菜もとらないといけないですね。