ジーディーシー日記2009 -090324-

GDC2009

AI Summitの2日目になります。朝早めに会場に向かいます。この集中セッション、結構な人気で毎回立ち見が出ているので。会場は狭いという訳ではないので、AIに関する注目がやはり強い傾向があるという事でしょうか。加えて、会場が混雑する前の無線LANが快適なので。。。昼間は混み合っていてネットはあまり快適とは言えないです。

●Breaking the Cokie-Cutter: Modeling Indvidual Personality, Mood, and Emotion in Characters
Cookie-Cutterというのはある決まったテンプレート(法則、決まりごと)によって作成されたキャラクタ設計という事をさしています。クッキーを作るときの型抜きのように同じものがポンポン出来上がるイメージです。従来のキャラクタ表現がこのような定型化であり、如何にこうした表現から脱却するのか、そのヒントやメソッドを紹介するセッションでした。

SIMS3ではSIMSそれぞれに特性を持っており、何を望むか動機のバランスをパラメータ化して、自律した行動を表現しています。SIMS同士のインタラクションにも、相手が何をしているのか認識している・していない、相手のことを知っている・知っていないといった認識とSIMSの社交的とか反社会的といったような特性との組み合わせによって、行動が変化するそうです。キャラクタの特性と動機付けの優先度の変化というパラメータの仕組みと自律した個性の表現が紐付けされているのが理解できるセッションでした。「なんとなく」それっぽく動かすということは実は結構膨大な労力がかかります。体系立てることは、一見すると自然さに欠けるイメージを持ってしまいますが、ゲームという限られたリソースの中で「なんとなく」を表現する場合は、むしろこうした考え方が大切だと考えさせられました。

AIRLINE TRAFFIC MANAGERの事例では、航空利用客という個人というよりは群衆行動的な表現にどうやって、現実味ある多様性を持たせるかその方法と考え方が紹介されました。乗客のタイプ(ビジネスや旅行、団体など)や航空券を購入する際の判断(値段や快適さ、時間、ブランド力など)を組み合わせ、更にそれぞれの時期や時間帯による傾向を組み合わせることによって、現実感のある航空利用客の行動を表現することができるそうです。多くの選択肢からプレイヤが自ら選択して、ルール、縛りを設定するという点で、プレイスタイルの多様性を与えることも出来るとのこと。この事例は現実の現象をシミュレーションするという点でパラメータとする要素をあげて、体系化するプロセスが分かり易く説明されていますが、取り扱うテーマが架空のものであったとしても、キャラクタにどういった多様性や表現をしたいのか、その分析を行い、体系化することがGameAIに繋がるのかもしれないと感じました。

キャラクタアニメーションという観点から見ると、従来のアニメーション制作では、ある程度のゲームの筋書きが決まっており、筋書きに従ってアニメーションを用意するということが多かったと思います。多様化というとアニメータ的には「アニメーションデータをたくさん用意する」という方法がまず思い浮かべられますが、上記のような流動的なパラメータによってアニメーションが制御される場合を考えると、アニメーションデータを如何にうまくコントロールできるか、といった観点でアニメーションを作成する必要もあるのかもしれないと思いました。

●Beyond Behavior: An Intoroduction to Knowledge Representation
キャラクタの「知識表現」に関するセッションです。キャラクタが自律して動いているように表現するためには、知識の表現は欠かすことが出来ないでしょう。Knowledge RepresentationをKRと略して、ゲームの仕組みの中では、オブジェクトを認識して、それが何であるか判断し、Behaviorとしてどう振舞うのか紐付ける役目を果たすものといえます。

タイムスケールに対する考え方が興味深かったです。例えば、サンプルとして提示されたのは、プレイヤーを探索、追いかけるキャラクタを表現するもので、時間の概念として、プレイヤーの行動軌跡をある程度キャラクタに情報として提示する事で、ダンジョンの中を気配を察知しながら探索するような動きを表現することが出来ます。これも1つの知識だという訳です。もちろん、長いタームで見ればオブジェクトそのものが何であるかという知識が必要な場合もあり、知識としてタイムスケールのどのあたりで必要になるかによって、知識を表現する仕組みも変わってくることが分かります。

長いタームで見ると、ステージにある物に対する知識をアクションへのインタラクションと結びつけることも考えられます。FPSでのNPCの表現で状況によって行動が異なるような複雑なロジックはこうした知識の概念を取り入れて表現されている事例もあるようです。このセッションで紹介されたKRという概念、これもまたGameAIを構成する1つの要素という訳ですが、タイトルによってこうした様々な概念があるという点で「タイトル毎にGameAIは作られる」といった認識が強いのではないかと思いました。

AI Summitに2日間参加した訳ですが、参加したセッション中、アニメータ的にこれからの参考になる事が50%はあったように感じます。それだけ、今自分がゲーム開発の中で関連していない事柄が多いという悲しい事実を表している事にもなる訳ですが。。。。技術的な内容のセッションに出てしまって、「これは、自分には難易度高すぎる。。。」というような状況も多々ありましたが、アニメーションとAIの関連性でアニメーター的に認識しておいた方が今後役に立ちそうな情報は得ることが出来たと思います。

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TAD's STAKE

セッション終了後はカナダパーティーへ。デベロッパーの交流会ですが毎回ごった返しの状態です。バーモニターにはゲーム画面が。まぁ、ゲーム開発者のカンファレンスらしいパーティーでしょう。こんなイベントが毎晩開催される訳です。こういうのもGDCの面白さの1つだと言えます。ほどほどにしておかないと翌日に響きますが。(笑)ほどほどに楽しんだ後で、OさんとSさんと一緒にTAD’S STAKEへ。昔ながらのステーキ屋さんで、がっつりアメリカンなステーキをいただきました。