ジーディーシー日記2009 -090323-

GDC2009

GDC2009初日です。今日を含めた2日間は前半として、チュートリアルやサミットなどが開催されます。3日目以降から参加する人もいるので、まださほど会場が込み合っている感じはありません。自分は昨日、レジストレーションを行ったのですが、当日の朝でも、昨日と殆ど変わらないような混雑具合でした。

AI Summit
今年から開催されるセッションで、ゲームAI全般に関するセッションを2日間に渡って集中的に行うというものです。こういった1つのテーマに絞って集中的にセッションを開催するというものは、それをオーガナイズする方がいらっしゃる訳でして、Game AI prpgramer’s Guildという業界有志のコミュニティが中心となっているそうです。こうしたコミュニティ形成は北米の業界ではとても早いです。CEDECでもこうした動きはありますが、アクティブさが違いますね。日本のコミュニティも負けず熱心な方が沢山いらっしゃいますが、あまり表面化しないのは、お国柄によるところが大きいかなと思います。

 

●#define GAME_AI
「GameAIとは?」という定義と、これまでのGameAIの変遷を解説した内容でした。このSummitがGameAIプログラマ向けの内容で、アニメータ
の自分では技術的な部分は理解することが難しいと思っていましたが、これからのゲーム・アニメーション表現において一つのキーワードになりうるのではないかと
考えさせられました。直近でアーティストレベルでAIを意識した何かができるという事にはならないとい思いますが、現状のゲームシステム上でアニメーションの最終的な
調整を行うことからも予想できるように、ゲーム・アニメーションの制作においてGameAIが深く関わることが予想されます。
現在のGameAIのトレンドはBehavior TreesとNeural
Networkに分けられるそうです。Hehavior
TreesはHalo2で採用されたシステムで、キャラクタの行動を枝分かれの階層構造で体系付けしてプログラミングするというもの。アニメーターがキャ
ラクタの動きを遷移図として整理しているものをより大きな括りで行っているとイメージすると分かり易いかもしれません。Neural
Networkはよりファジーなもので、外的な変化やプレイヤーの状態を参照して、行動に微妙な調整を加えていくといったもの。パラメータを色々取ってきて判断を決めていくといった感じでしょうか。。。
このセッションでは自分が考えていた以上に遥かに広い捉え方でAIを定義していました。ゲームシステムは当たり前として、自分に最も関わる部分では、アニメー
ション表現のために、そんなAIがあるかも明確に分類されています。ストーリー進行のためのAIや地形生成に即した植物自動生成のためのAIなども
GameAIとして上げられています。このセッションを受けて自分が思ったのは、GameAIという分野が急に現れたものと言うわけではなく、過去のゲーム
タイトルにおいても、何かしらインテリジェントな表現をするというものは存在していて、近年になって、こうした表現に関して専門化が進んできた事によっ
て、GameAIという形で表面化してきたのではないかと推測します。AIというと構えてしまうのですが、やっていることは「賢いCキャラ」と見ると、結構身近な要素なのかな、とも思えてきます。w

 

●Animating in a Complax World: Integrating AI and Animation
アニメーション制御とAIの統合に関するセッション。内容的にはアニメータにも十分参考になる部分が多くありました。第1部では、動的に変化する移動アニメー
ションをどのように制御するのか、留意すべきポイントがLowレベルなものから順次紹介されていきました。パラメトリックなアニメーションコントロールやプロトタイ
プの段階と述べながらも、Step-Baseのアニメーション制御も紹介されています。
第2部では第1部を踏まえてAIとアニメーションの統合について論じられました。AIとキャラクタは分離して、AIプログラマ、アニメーターとキャラクタプロ
グラマ、スクリプタの3つの面でキャラクタをコントロールすることを提案しています。プログラムの設計的な解説でしたが、こうした仕組みの上でキャラクタ
をコントロールするためには、どういった要素でコントロールされているのか認識している必要はあると感じます。
AIの目的は様々ですが、少なくとも、このセッションで述べられているのは、アニメーションを効率的に、より高いレベルでコン
トロールするというものではなく、現在のゲームキャラクタに無い、より知覚的な要素を行わせるための様々な判断を行う機能といったほうが良いのかも知れな
いと思いました。また、それを高いレベルで視覚化するためには、より高いアニメーション技術が求められると思います。現在のアニメーションコントロールの先にある手法とそれに最適化したアニメーション制作が今後、アニメータにとって課題になるのではないでしょうか。

 

●2008 AI Postmortems: SPORE,GEAR OF WAR2, and BIOSHOCK
昨年度、話題となったタイトルでのAIに関する検証を行うセッションです。アニメーター的に興味深かったのは、AIのバグの対処にどのプロジェクトでも専門的な対処体制を整えている点です。アニメーションを作成している身としてはキャラクタがどんな動きをするのか、イメージしながら動きを作っていく訳ですが、最近取り上げられている、Game AIやアニメーションの自動生成、動的な調整といった要素が取り入れられた場合、ゲームシステム的に問題になるものから、表現として明らかにおかしい場合、イメージしたキャラクタの動きでは無いといったデザイン的なものまで、様々な予期しなかった挙動が発生することが考えられます。こういったものに対して、開発者はどうやってデバッグしていくのか、という事はとても興味のあるところです。
BIOSHOKではアニメータやプログラマ、ゲームデザイナからなるチームを編成して対処していたそうです。前述した Integrating AI and Animationでも述べられている通り、キャラクタの表現にAIが取り込まれていくと、AIプログラム、アニメーション、キャラクタ・プログラム、スクリプトといった複数の要素が絡み合って、キャラクタが成立することとになる、ということを考えると、人的に対応していく場合はこうした構成になっていくのでしょう。
GEAR OF WAR2ではAI LOG や Bug it AI(名前がイカしてますね。)といったバグ関連ツール面での充実を図って、技術的に対処していく事例が紹介されました。AIに限らず、いわゆるオープンワールド型といわれている大規模タイトルでプロシージャル技術を取り入れていくと、膨大な検証パターンを人的にチェックしていくということが難しくなっていきます。Log解析や自動的なチェックシステムなどは昨年のGDCでも今後の課題としてあげられていましたが、こうした傾向は強くなっていくように感じました。

 

●Characters welcome: Next Step Towards Human AI
現在のGameAIにみられるキャラクタ表現のAIをふまえて、次にどのようなAIが目標となるのか、キャラクタアニメータや、ロボテクス、ゲームエンジニアなどがパネルディスカッションを行いました。まぁ、色々な見解からディスカッションを行っているので、何かしらのまとまった見解が見られるという訳ではないのですが、一言にキャラクタ性を表現することが出来るAIといっても、その定義は幅広く、また技術的にも様々な課題があるので、まだまだ想像上の技術といった感が強く感じました。
このパネルセッションを含めてた今日のAI Summitを通して、アニメータ的視点から今後キャラクタAIがどのように発展していくか考えると、ゲームデザイナーやアーティストが創造するキャラクタ性をインタラクティブに表現するために、それに必要な情報や判断を如何に引き出して表現と結びつけるか、という方向性に向かっていくのではないか思いました。キャラクタを表現する要素にアニメーションやキャラクタデザインと同じような位置付けで、AIデザインといったものが将来、アーティスティクな要素として加わるかもしれない、そんな将来妄想するネタとしては面白いセッションでした。

 

今日はセッション終了後にAI Summitで再会した元同僚のKさんと今日のセッションについてあれこれと談義。こういう業界内の方々と会うことが出来るのもGDCの魅力だったりします。こうして海外まで知識やスキルを高めようという元気な方と話をするのは楽しいです。色々アイデアも沢山いただきます。1時間以上話し込んで、途中で夕食をとって、ホテルでレポート作成。WBCがいつの間にか決勝で日韓戦をやっていて優勝してました。知らなかった。。。こちらではテレビでもさほど盛り上がっていなかったので。(笑)