長いプロローグが終わって、いよいよGDC初日です。前半2日間はチュートリアルとサミットでセッションが構成されています。ビジュアルアートに直接的に関係するセッションが殆どないというのが、ちょっとつらいですが、AIサミットを受講することにしました。(サミットはオンラインレジストレーション時に一緒に選択します。)前回受講してから、北米でのビデオゲームにおけるAIがどのような状況なのか、それだけでも興味のあるところです。
AIがデジタルワールドの認知、判断に関わる仕組みであるならば、その次にAIの結果を受けてビジュアル的に表現として出力される物として、アニメーションは大きな役割を果たすと自分は考えています。そういった意味では、技術的な内容が多いのですが、状況をビジュアルアーツ側の立場として認識しておく必要があると思っています。
●AI Postmortems: Kingdoms of Amalur: Reckoning, Darkness II and Skulls of the Shogun
3つのタイトル開発におけるAIのポストモーテム(振り返り)です。いきなり実例をあつかったセッションというのには驚きました。AIの技術つうんぬんというよりはゲーム体験のためにどのような工夫をAIで取り込んだか、という内容でした。
Darkness IIは1人称のアクションゲームで、NPCのリアクションに関して説明されていました。プレイヤー対NPC、環境の変化対NPCなど、それぞれにゲームデザインやビジュアル表現に深く関わるところでリアクションの変化をAIでコントロールしています。例えば明るい場所から暗い場所に変化すると、一瞬ひるんで、NPCのサイティングが悪くなったりといった表現がコントロールされています。リアクションの変化をリニアではなく、人間臭く一瞬タイミングを変えているといった工夫は、ある意味、キャラクターアニメーション表現の一部を担っているとも見る事が出来て面白いです。こうした表現が高度化していくと、多分アニメーション表現の担当という認識がされるようになると思います。
Skulls of the Shogunはダウンロードタイプのコンソールゲームで骸骨に日本の戦国時代テイストという表現が日本でも一部で話題となったストラテジー+アクション的な2Dゲームです。当初のゲームデザインからどのようにAIを実装して行ったか、(当初は非常に膨大なリストを生成する必要があり、これをどのように効率化するかが課題だったようです)完成までの振り返りが発表されています。
Kingdoms of Amalur: Reckoningの事例ではゲームデザイナーが使用するNPCコントロール用のアクションリストエディタを中心の内容です。ゲームデザイナーは時として、AI的に複雑怪奇なNPCコントロールをしようとする時があるというのが面白かったです。なるべく自由度は保証しつつも効率的でAI的に整合性が合っているリストを作るための工夫ということで、AIのコントロールがゲームデザイナーでもきちんとできるように、という意識がこちらの開発では強くなっているように感じました。
●Believable Tactics for Squad AI
現実感のあるチーム戦術AIの作り方のセッションです。本題とは離れるのですが、このセッションのプレゼンテーションがイカしてます!実際に動いているデモ画面とスライドが融合したような画面になっており、ゲームパッドでスライドコントロールしていました。(途中で落ちたのはご愛嬌ですね。)チーム戦術AIに関わる要素と体系の解説でしたが、技術的な部分は置いておいて、AIとアニメーション表現の連携を考える上で、ゲームデザイナーやアニメーターでも参考になる事は多いと思います。実際に動いている状態で説明されているのも理解しやすいです。チーム戦術AIでは、プレイヤーの状態やカバーできる場所がどこにあるか、目的方向、エンカウントの方向など様々な外的要因から最適と思われるビヘイビアを導きだす必要があります。どのようなテクニックを使えば、そのようなAIが出来るのかはこのセッションで説明されていますが、ビヘイビアにふさわしい動きはどんな動きか、ビヘイビアに対応したどのようなモーション遷移が考えられるかは、アーティスト次第の領域といえます。また、逆説的ではありますが、AI挙動的に気持ち良い(もちろんこれはゲームデザイン的にも気持ち良い事が前提ですが)ステージングということにも繋がり、これはゲームデザインの領域とも言えます。
●Managing the Masses: Crafting AI for Online Games
オンラインゲームにおけるAI事例です。Guild Wars 2とCityVilleの事例が紹介されました。前述のコンソール、PC系とは異なり、1プレイヤーあたりに割り当てられるリソースをどのように効率よく運用していくかということが課題にあるそうです。ゲームデザインも必然的にこれらを考慮した形で設計されているのが興味深いです。コンソール系でもリソースの意識は必要ですが、それ以上にシビアさを感じました。CityVilleのAIを絡めたゲームデザインの話はコンパクトなロジックでどれだけ奥深さを感じさせるかという部分が面白かったです。
ということで、1日目が終了しました。セッション会場ではいろんな人に会います。その後いろいろゲーム開発談義をしながらご飯タイム。これもGDCの楽しみですね。今日はホテルの近くのチャイニーズへ。飲茶ワゴンスタイルで、押しの強い売り込みに沢山頼んで、たらふく頂きました。う〜ん食べ過ぎ??