シーグラ日記 2009 8月3日

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SIGGRAPH初日です。機器展が明日からなので人はまだ少なめとな感じです。おなじみのFOUG!は今日が初日です。料理の鉄人CG映像制作版です。相変わらず会場のあちこちで、バイキングの帽子をかぶって、「FOURG!」と叫ぶ宣伝担当を見かけます。

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●GEEK BAR
今年もが帰ってきました。耳が動いたりとか細かなところでバージョンアップしています。ちょっと笑わせるトークは変わりありません。もう、GEEK BARの看板となりつつあります。BARの内容は昨年と変わらず、主立ったセッションのリアルタイムストリーミングを飲み物片手に楽しむことが出来ます。ニューオリンズらしく、ライブもあります。

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●Computer Animation Festival
昨年と異なり、コンベンションセンターの中にシアターが設置されており、タイムテーブルに沿って出入り自由で開催されています。会場は狭くもなく、広くもないといった感じでしょうか。昨年のNOKIAシアターは大きすぎたのかな、と思います。

●From Inside Jams to Professional Piplines
ゲーム制作のパイプラインを色々と取り揃えた内容でしたが、大きな意味でのパイプラインという捉え方でした。

・Houdini in a Game Pipeline
Killzone2でHoudiniが使用されていることは、SideEffectsのサイトなどで紹介されていますが、その内容に沿ったものでした。ゲーム開発にノードベースのビジュアル・プログラミングツールとも言うべき、アーティストにとってはあまりなじみの無いHoudiniを採用した背景に、大きなデータアセットを効率的に扱う事、プロトタイピングのしやすさ、大量のコンテンツ量を気にする事無く、クオリティに集中するための環境がポイントとなったそうです。Houdiniのような一見慣れないアプローチでのコンテンツ制作はアーティストにとって、生産性を損なう印象が自分にもありましたが、定常的、法則的な手順をプロシージャル化する事は、どの部分にクリエイティビティを集中するのか、明確にする事とも解釈することが出来ます。
地形の生成については、ゲームステージで使用するデータを基に細分化し、地表の凹凸をプロシージャルで生成する事で、大まかな造形はアーティストがコントロール、ノイズ的なディティールはプロシージャルといった分担がされています。(プロシージャルでもパラメータのコントロールは可能ですが)ディティールを加えたモデルを使用して、ノーマルマップを生成し、基のモデルデータに使用する流れはゲーム制作でよく使われるフローです。Zburaushなどの3Dペイント系ツールの代わりにHoudiniで半自動化しているのがこの事例の特徴と言えます。
破壊アセットは1200以上にものぼり、これらの制作にもHoudiniが活用されたようです。破壊された箇所は、破壊されていないモデルを基に細分化したメッシュからポイントを取り出して、これを基に生成したボリュームオブジェクトを基にフラクタルな分割されたモデルが自動生成されています。むき出した鉄骨などは、やはり、破壊されていない状態のオブジェクトからメッシュを生成して、プロシージャルな方法で歪めたものを使用して自動生成されています。イベントシーンなどで派手にビルが崩壊するようなシーンにもこの手法が取り入れられているようです。
クロスシミュレーションはリアルタイムでは処理が重いため、事前にHoudiniでシミュレートしたクロスシミュレーションの結果をボーンアニメーションに変換して使用されているようです。前世代のゲームハード(PS2、XBOXなど)では、大量のコンテンツをタイムラインに沿って切り替えてアニメーション表現する事に限界がありましたが、現世代ではこうした手法を取り入れる事も可能になって来ており、事前処理による細かなグラフィック、アニメーション表現の手法は当面、様々な箇所で使われるのではないかと思われます。
以上のようなプロシージャルな手法を取り入れたゲーム制作の事例が紹介されましたが、最後に問題点として、Houdiniのような特殊なツールを扱うスキルを持ったアーティストを見つける事が難しい事、リードやスーパーバイザーがプロシージャル的手法を十分理解しておかなければならないという事が挙げられました。このあたりは全世界的に課題となっている様に思えます。今後、ゲーム開発においてプロシージャル的な手法を積極的に取り入れて行く事で、Houdiniというツールに限らずより大きな意味でのプロシージャル的思考がアーティストに一般的になって行くのでは無いかと思われます。

・SPORE API:Accessing a Unique Database of Player Creativity
SPOREのデータベースに蓄積されたユーザークリエイテッドコンテンツをAPIを活用して更に2次利用した場合の事例を色々と詳細されました。SPORE、いつの間にかすごいことになっていますね。自分がデジザインした、クリーチャーや乗り物、建造物をゲームユーザー同士でサーバーを介して共有するための仕組みが、APIを利用する事で、コンテンツを造る楽しみに幅を広げているように感じました。よりコンテンツを検索しやすいブラウザはもちろん、イラスト風にイメージを生成したり、作成したクリーチャーをCORADAへエキスポートして、MAYAでレンダリングといった事例まで紹介されました。
SPOREはユーザーにコンテンツを自由に作成することが出来る環境とそれを効率的に共有する仕組みを構築する事で、無限に広がる銀河を舞台としたゲームを実現する事ができたと言えます。ユーザークリエイテッドコンテンツにはメリット・デメリットが表裏一体で存在しており、日本のゲームメーカーの場合、デメリットの方が来式が強いためなのか、思い切った活用が見当たらないのが現状だと感じています。このSPORE APIに見る事例は、ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツをうまく活用する事で、ゲームタイトルのロングライフ化、多様展開、を可能にする1つの例として見ることが出来ると思います。日本では積極的なSPORE APIの展開が見られないのが、ちょっと残念ですね。

●Making It Move
物理的現象な動きを取り上げたセッションと言うべきでしょうか。キャラクタの動きに絡む物理っぽい動きを取り上げた内容もありました。印象的なのは、数年前にあったような、よりそれっぽくするために、考えられるだけの現象を数理的処理に置き換えました、というものがなくなって、かなりシンプルなアプローチになっているのではないか、と感じさせられました。

・Geometric Fracture Modeling “Bolt”
「Bolt」の破壊シーンに関する技術紹介です。地面や物体に亀裂が入って、破壊されるプロセスで亀裂の表現をどのように表現したのか解説されました。亀裂の表現はSIGGRAPHのPAPERでも様々なアプローチが発表されていますが、それっぽく見せて、現象の正確な再現という面はそれほど考慮していないアプローチです。大まかな部分では午前中のKillzone2の破壊表現と共通する部分が多く見受けられました。

・Simulating Baloon Canopy in “Up”
日本未公開の「Up」の風船の表現に関する事例紹介です。前項のBoltもそうですが、日本未公開の事例はネタばらしになるところもあって、受講するのはなんとも悩ましいところです。(Boltなんて、出発の直後の公開だったりしますからねぇ。。。)風船のフワフワした動きはRIgit Dynamicsをベースに、動きの表現によってSpling や Turburanceなどを併用しています。パーティクルや物理シミュレーションを組み合わせたRIGのような印象です。却下された事例として流体シミュレーションによる映像も紹介されました。動き的に風船らしくないという事もありますが、実際に採用されたアプローチの変遷や応用を見ると、「アーティストのここぞと言うところで意図的にコントロールできる柔軟性」というところで流体シミュレーションのアプローチは今ひとつだったのかな、とも思わされました。シミュレーションとはいいつつ、意図的にコントロールが必要な部分は直感的なパラメータ構成によってコントロール可能となっていました。

・Fight Night 4:Physics-Driven Animation and Visuals
このセッション(もしかしたら今年のSIGGRAPHともいえるかも)で個人的には印象的な事例紹介でした。映画の事例とゲームタイトルの事例が一緒に構成されるというのは、今まで殆どなかったのではないでしょうか。Fight Nightはボクシングゲームで、パンチを受けた際の挙動表現が細かい事で話題のゲームタイトルです。対戦ゲームにおけるアニメーション表現は、既に作成されたアニメーションクリップをタイミングを合わせて再生されるだけというのがオーソドックスな表現なのですが、FightNight4では物理的なコリジョンを参照に独自のマッスル・システムやアニメーションの補正システムによって、キャラクタ同士のインタラクションによる動作補正も行われています。このタイトル、ぱっと見たときのインパクトがパンチによってひしゃげる顔の表現や汗の飛沫だったりするのですが、細かなところで新しいゲームアニメーションの試みがされています。

・B.O.B:Breaking Ordinary Boundaries of Animation in “Moster Vs. Aliens”
スライムみたいな、BOBの制作事例です。これも数年前では似たような表現を行う際に流体シミュレーションを使って、アニメーションを意図的にコントロールするには。。。といったアプローチが多かったと記憶していますが、この事例を見ると色々なアプローチのいいとこ取りの印象を受けました。極端な表情変化のある顔や手の部分は別のオブジェクレイヤーとして扱われて、コントロールされています。技術的な進歩ももちろんあると思いますが、表現の核となるのはアーティストによるアニメーション表現とテクノロジーを如何にうまく融合させるのか、といったところではないかと改めて感じました。いったん大きくテクノロジー先行になった風潮が、近年はアニメーション手法にウェイトを置いたアプローチになっていますが、技術進歩によって今後またこのバランスが変化される事もあると思います。CGはこういった変化があるのが楽しいとも言えますね。

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ということで、無事に1日目が終了しました。「本日の晩ご飯」は地ビールアラカルトです。w ジャクソン広場の近くにある CRESCENT CITYというお店で、このお店オリジナルの5種類のビールを飲みまくりました。酒の肴はアヒルや牡蠣など地元っぽいものでビールに非常に合います。店構えがカウンターにライブステージと呑み屋テイストが強いですが、きちんとした食事もできてなかなかおすすめなお店です。探索してくださったKAORUさんに感謝感謝です。