シーグラ日記 2009 8月7日

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SIGGRAPH最終日です。機器展関係の来場者がいなくなってますし、午後はセッションのみになるので、かなり閑散としています。

●Realistic Human Body Movement for Emotional Expressiveness
人体運動に関しての近年のトレンドを紹介するような内容です。以前はロボットモノのアプローチでコーズが開催された事がありますが、今回はキャラクターアニメーションからのアプローチです。技術的な事柄も一部にはありますが、アニメーターでも人体運動に関するCG研究の流れを読み取ることが出来る内容でした。

 

・Hand-Crafted Procedural Animation
男性、女性、中間(講演の中ではNaturalと言われていました)のアニメーションと外観(関節位置をポイントで表したもの、ハイレゾのバーチャルモデル、ローレゾのバーチャルモデル、デッサン人形、カートゥーンキャラクタ、ゾンビキャラクタ)を組み合わせて、女性らしさ、男性らしさ、Naturalさ、怒り、悲しみ、喜びなど、意図した性別の動きに見えるもの、意図した感情表現に見えるものはどの組み合わせか、といった調査から感情表現とはどういったものなのかという事をリサーチされていました。普段の製品開発では感覚的、経験則的な部分で、動きに関する判断を行う事が多いと思います。学術的なリサーチの内容ですが、アニメーターにとって興味深い情報が多く含まれていました。演技的な内容が多かったので、ゲームで多く見られる、アクション等に関しても同様のリサーチを行うと、面白い結果が見られるかもしれません。

 

・Biomechanical and Physical Principles of Human Animation
生物学的な筋肉や物理シミュレーションによるアニメーション作成に関しての現在までの技術変遷の解説でした。前述のemotionよりはより数学的なアプローチといえます。
・フィジカルベースシミュレーション
・筋肉シミュレーション
・バランス制御
・力学モデルの単純化
・コントローラーと最適化

 

・Evaluating Expressive Human Motion, and Perceptual Issues
上記2つの題材の丁度中間的な見解からのアニメーション作成に関する解説です。いわゆる現在のプロシージャルアニメーションと呼ばれている、プロダクションワークで実践されているものに近い内容でした。現状のプロシージャルアニメーションを
1. データをドライブ、あるいは学習によるアニメーション
2. ダイナミクス、あるいはフィジックスによるアニメーション
に分類して解説されていました。実際にはSIGGRAPHのプロダクションセッションでは両方のメリットを活かした、ハイブリットなアプローチも事例として上げられています。
●Character Animation and Rigging
キャラクターアニメーションとRIGに関する研究報告やプロダクション事例です。これが今年のラストセッションになりました。

 

・Animation and Simulation of Octopus Arms in “Night at the Museum 2”
ナイトミュージアム2に登場する巨大タコのアニメーションRIGの事例です。骨のないタコの動きを自然な動きをたくさんのインタラクションとコリジョンをコントロールすることが課題となったそうです。シミュレーションとキーフレームアニメーションのハイブリッドのアプローチで有機的な動きを意図的にコントロールしています。シミュレーションの動きに対して、アニメーターは従来のキーフレームアニメーションの手法で最終的な動きのコントロールを行っています。シミュレーションはクロスシミュレーションとソフトボディのハイブリッドで表現されています。そのほかに吸盤の挙動なども表現されていますが、スプリングシミュレーションを応用したりと、一昨年あたりに見られた、複雑なシミュレーションを行わず、シンプルかつ意図的にコントロールしたい部分はコントローラブルにするといった傾向が今年は強いと感じました。

 

・Methods for Fast Skeleton Sketching
視点を変えながら、キャラクタのシェイプに合わせてラインを描画するだけで、スケルトンがセットアップできる環境を構築した事例紹介です。スケルトンを簡単な操作や自動で作成する事例は、これまでにもいくつか事例がありましたが、この事例の特徴的なのは、予めコントロールまで構築したRIGをテンプレートにして、描画したラインのプロポーションにリターゲットする機能がある事です。定型的なコントロールをキャラクタモデルにセットアップするだけであれば、シェイプに合わせてラインを描くだけの工程になります。

 

・Practical Character Physics For Animators
キャラクタの移動パスを調整する事で、身体的な特性を推論して、キャラクタの挙動やタイミングを総合的にアニメーションを編集する技術事例です。パスを用いた調整や、タイムワープで動きの内容は保持しつつ、タイミングを調整するタイムワープのような技術は既にDCCツールに組み込まれているような状況ですが、このセッションで紹介された技術は動き自体にもフィジカルな要素を基に調整します。リアルタイムのキャラクタアニメーションのコントロールにも応用できると面白そうです。

 

・Surface Motion Graphs for Character Animation From 3D Video
3D Videoは複数カメラからの画像を基にサーフェースデータを生成します。昨年はこの技術にスケルトンを自動生成する方法が紹介されていましたが、今年はモーショングラフを作成する技術が紹介されました。モーショングラフは意図的なコントロールが可能になると色々と可能性が広がるように思えるのですが。

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これで今年のSIGGRAPHが終了しました。所感としてはGAME関連が多くとり上がられていましたが、GDCと比較した際に、やはりプロダクション関連の充実さでは負けている感じはしました。GAME PAPERも大きな枠の中でのゲーム関連の論文と行った印象が強く、個人的にはSIGGRAPHらしく、グラフィックやインタラクションに関するものにフォーカスした方がGDCとの差別化が図れるのではないかと思いました。全体的な傾向としては立体視に関して、かなり進んだ試行錯誤が行われており、今後ゲームでも立体視を取り入れるような場合には参考になる事が多くありました。映像表現的な面からの立体視のノウハウに加えて、より映像に集中する度合が強いゲームならではの立体視に対するノウハウの蓄積が必要だと思いました。

最後はメンバー全員で、CRESCENT CITYでオリジナルビールで乾杯です。生ガキももちろんいただきました。