シーグラ日記’07 8月9日

あっという間に最終日。今回はアニメーションシアターが殆ど見ることが出来なかった。(泣)SIGGRAPHに合わせてあちこちのデベロッパーとの打ち合わせがセッティングされるので、意外とSIGGRAPHそのものに割ける時間は少なかったりする。さて、今年のアニメーションシアターはどんなものか??と一応プログラムを確認してみると・・・・全部見るには半日以上かかりそう・・・一応、Game&FXのセクションだけ鑑賞できたが、今年は日本のタイトル少なくてちょっとパワーダウンなのか??と感じさせられた。う~ん、このままではいかんなぁ・・・・・

SKETCHES Making Faces
フェイシャルに関するスケッチ。レンダリングからインターフェース、リターゲットメソッドまで内容は様々であった。
Anatomically Accurate Modeling and Rendering of the Human Eye
人間の目をきちんとその見え方をレンダリングで再現しようという試み。このような細かな部分へのよりリアリスティックな挑戦はそのままリアルタイムですぐに応用できるというものではないが(それでも最近はその間隔は非常に短くなってきているのだが・・・)例えば、テクスチャーマップで表現する際にでも、どういう原理があって、表現するものがそのように見えているのか、意識するだけでも大いにクオリティアップに役立つ。目はフェイシャルの要素ではとても重要で、見た目の表現や動きの再現など、これから色々な試みがされていくと予想される。身近なところでは視線追尾とか・・・

Sketching Facial Expressions
スケッチベースインタフェースによるフェイシャル。ストロークをキャプチャして傾向を解析してシェイプに反映させている。2Dでも3Dでも対応し、なんといってもターゲットとなる顔モデルに依存しない、共通のインターフェース(といっても表情を描く顔のフレームだけなのだが・・・)であるという点。モデルによって、期待されるものと実際に出来上がる結果とのギャップが大きいこともあると思うが、プロトタイプやストリーボードなどに応用することが出来ると思った。スケッチインターフェースは誰でも簡単にある程度のコントロールは可能だが、スケッチでは表すことが難しい顔の筋肉の移動による形状の変化に至る細かなコントロールに関しては、現状では難しそうだ。

Fast and Reusable Facial Rigging and Animation
rig構造やモデル形状が全く異なっていても、フェイシャルアニメーションやリグをリターゲットできるメソッド。特に口周りの例に見られるメッシュに口の形状変化を1度移して、そのメッシュのUVの変異を基にリターゲットしている点が、今までのリターゲットとは異なるアプローチだと感じた。特にコミカルなデザインのモデル同士のリターゲットでは効果が期待できそうだ。環境はMAYA上に構築されたものだが、原理をその他のソフトウェアで再現することは可能だと思われる。

SKETCHES Spor
3月に視察したGDCでも事例紹介があったが、今回はより細かなモードに関する簡単な紹介があった。今回紹介された内容で特に面白かったのはテクスチャシステムの部分とRIGシステムの詳細だった。テクスチャに関してもプロシージャルなアプローチで構築されており、これがパーティクルベースだと言うのが面白い。RIGシステムは簡単なプロシージャル・モデリングのシステムも含まれており、ベースがCGツールのMAYAで構築されているという点が興味深かった。

Player-Driven Procedural Texturing
パーティクルをペイントに応用して、ユーザーが自由にテクスチャをカスタマイズすることが出来るシステムの例。パーティクルの操作はスクリプト制御が可能で、予めプリセットされているマップは実はこのシステムのスクリプトで作成されているとのこと。柄をそのままに、カラーだけのカスタマイズが出来るのは、パーティクルの色を設定しているパラメータを変更している。クリーチャーのほかにユーザーがカスタマイズすることが出来る建物や乗り物などにも応用されている。

Rigblocks: Player-deformable Objects
クリーチャー・メイキング・システムの紹介。 GDCでも同様の内容のデモンストレーションは行われていたが、その仕組みや構成に関しては触れられることは無かった。今回の発表で面白いと思ったのはこの仕組みのベースがMAYAでカスタムMELを使って構築しているという点だった。ノンリニア・アニメーションシステムとカスタムパラメータを組み合わせて、アニメーションが破綻することなく、メッシュオブジェクトの形状、プロポーションに変更を加えるという仕組みはまさにプロシージャル・アニメーションであり、そういった機能が実はCGツールでは実現していて、ゲームシステムの構築のヒントになっている。モデルはメッシュモデルで単なる縦横比率のスケーリングではなく、伸ばしたい部分と伸ばしたくない部分がきちんと分けられて、スケーリングが掛かっている。こうしたシステムの仕組みを見ると、自由にカスタマイズ可能と思わされるSPORのシステムは、きちんとした体系付けられたバリエーション上に成り立っているものだと理解することができる。

Improving Real-Time Motion
GDCでも発表されていたプロシージャル・アニメーションシステム。今回は細かな設定まで紹介があった。このシステムはプロシージャル・アニメーションをアニメーターが作成することをコンセプトとしている。アニメーターはハンドルをアニメートする代わりにパラメータを調整しながらキャラクタの動きを設定していく。GDCでの発表では一見、大雑把なパラメータコントロールしか出来ないのではないかと感じたが、今回のプレゼンテーションで、足の部分は踵、つま先の重心の変化やフロアコンタクトなどをきっちり再現しており、パラメータの調整はこれらの状態と整合するようにコントロールされている。トラッキングに関しては頭、上半身を別々にコンとローすることも可能だった。今回のセッションではプロポーションの変更にも対応した機能の紹介もあった、二足歩行型のクリーチャーならすぐに対応できるのではないかと思わせる機能の充実振りだった。現状スポーツゲームに特化した進化をしているが、応用で様々なタイプのタイトルにも使用できるのではないかと感じた。プロシージャルアニメーションは従来のモーション再生型のシステムと比較して、メモリリソースを多く必要しないという点でネットワークゲームなどにも使えそうだ、

PAPER Character Animation II
SIMBICON: Simple Biped Locomotion Control
リアルタイムのバイペットのダイナミックコントロール。外的な力が加わっても姿勢コントロールを行う。まず、ポーズによってモーションがコントロールされている。これに外的影響をダイナミックスによって重心がどのように変化するかによって、間接の挙動が変化している。これも、完全なロボテクスでもなく、アニメーションデータを今にうまく繋げていくか、といったモーションデータベースでもない、ハイブリッドなメソッドになっている。

Construction and optimal search of interpolated motion graphs
キャラクタの移動パスを定義するだけで、パス上にあるステージの状況に最適なモーションを繋げてアニメーションを構築するというもの。パスの途中にオブジェクトを取るなどの拘束点を設定することが出来る。また川や床の無い、飛び越さなければならないような状態、環境に依存する拘束はパスから判定されて、自動的に設定される。モーションは幾つかの最適化してモーションを組み合わせることによって精度を上げている。こうしたアプローチはゲームスクリプトに似ているが、GUIという分かりやすいインタフェースと動作の要となる拘束点以外の動きやステージに依存するような動きに関しては自動的にモーションが定義されている点が新しい。リアルタイム処理に応用できるとゲームのアニメーションで色々面白いことが出来そうだ。

Simulating Biped Behaviors from Human Motion Data
モーションキャプチャデータや運動力学的なデータをバランスを維持したシミュレーションデータに変換する方法。ゲームではキャラクタに起こる挙動を全てアニメーションデータとして予め用意しておく必要があるが、このアプローチが可能ならば、少なくとも、倒れたり、ダメージを受けたりするようなインタラクションな挙動はデータを用意する必要が無くなる。重心変化に対する挙動がリアルタイムで生成可能なら、それ自体をゲーム要素にすることも可能かもしれない。これも、SIMBICON同様にシミュレーション的な手法とデータベース的な手法のハイブリッドな手法といえる。これらの手法に共通して言える事は、シミュレーション的なアプローチにアーティストの意図を組み込みやすくなるという利点があると思った。

ということで、2年ぶりのSIGGRAPHが終了。最終日の夜はダウンタウンで一番美味しいと言われているステーキ屋でアメリカンサイズな肉を「もう、当分肉はいらないです」と思わせるくらい満喫。(笑)2年ぶりに参加したSIGGRAPHで感じたことは、アニメーション技術ですぐにでもゲームアニメーションに応用できそうor応用して欲しい技術が沢山あった。まだ、実用的に問題あるものが多いが、未来を予感できるドキドキしたものに5日間出会いまくり、というのはやっぱり楽しいし、これから1年間の自分の刺激にもなる。「もうメディアで色々取り上げているから行かなくてもいいよ」という人もいるが、こういう刺激やドキドキしたものはその場にいなければ感じられないものだと思った。