ジーディーシー日記2009 -090327-

最終日です。水曜日あたりから急速に日が進んでいるように思えます。金曜日はこちらの方々からすると半日ぐらいの感覚なのでしょうか。3時にはEXPOが終わってしまいます。まだ来場者がいるにもかかわらず、どんどん撤収作業が始められるって言うのは、日本の感覚とはちょっと違いますね。「蛍の光」に相当するようなエンディングBGとかってこっちではないんでしょうか。w

●The World of FABLE2
オープンワールド型タイトルを開発する上でのアートディビジョンにおけるアセット管理、デザインワークの決定フローなど、どのように実践したかといった内容でした。
Fable1での経験をふまえて、開発の初期段階で自由にワールドを動き回る環境が整えたそうです。広大なステージを制作する場合、アセットがどのくらいの量になるのか見積が非常に難しいです。どのくらいの力をアセットにかけることが出来るのか、アーティストが判断する手段として、実機でプレビューして確認することが出来るのは大きなメリットと言えます。本格的なアセット制作に入る前段階として、ホワイトボックスと呼ばれる、簡易モデルでステージを作成して検証を重ねるというプロセスは、やり直しを極力抑える効果があったそうです。因にFABLE1では20%〜30%のアセットが使われずに無駄なアセットとなってしまったのに対して、FABLE2では2%ほどしか無駄なアセットが発生しなかったということで、事前の検証作業という時間は発生するものの、アーティストが適切な制作に集中することが出来るという点で、トータルでは効率化に非常に貢献した方法だと言えます。

アセット制作のアウトソーシングの話も興味深い内容でした。非常にプランニングをしっかり行ったとの事で、初期段階で社内人材だけで全てのアセットを作成する事は困難と判断し、海外へのアウトソーシングを行ったそうです。「欲しいアセットを手に入れるためには、それ相応の時間と手間が必要」と考えておくべきという話は、日本ではスケジュールとマンパワーのバランスが採れなくなってから、アウトソーシングという話は良くあることで、なかなか耳が痛い内容でした。

AlienBrainでのアセット管理はメインツールである、XSI上からコントロールできるようにカスタマイズされています。このあたりはカスタマイズ具合の程度の差はありますが、今まで見てきた大規模プロジェクトの事例と同じ感じでした。アセット管理ツールそのままの状態で使用するのではなく、アーティストが通常使用しているツールをうまく融合させる事で利便性を高める必要はあるようです。

エンジンに実装するプロセスでのエンジンの限界とクリエイティブとゲーム性のバランスをとるために、どのようにアセットコントロールをするのか、興味があったのですが、この部分に関しては、1つ1つのアセットの組み合わせをマニュアルで調整して調整の繰り返しと行った状況のようです。アーティストやデザイナーのレベルで明確わかる、ボトルネック部分の提示やプロファイリングの仕組みはこれからの課題と言えます。

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●Style in Rendering: The History and Technique Behind ARO SAMURAI’S Look
アフロサムライは日本のアニメーションスタジオ ゴンゾが制作した北米向けのアニメーションです。特徴的なグラフィックを3Dアクションゲームでどのように実現したのか、プロダクションワークからシェーダーのテクニックを紹介する内容でした。

ゲーム化するにあたって、キャラクタのデザイニングについてゴンゾから詳細なアドバイスをもらっていたようです。着物の皺の流れの指示など、細かなビジュアル資料が紹介されました。北米の技術先行的なアプローチだと感じたのはキャラクタのシェーダーのアプローチです。イラストテイストのトゥーンシェーダーで、陰影部分から輪郭はもちろん、ハッチ部分などに関しても3Dで表現されています。3D的につじつまが合うような作り方は 、日本のゲームスタジオでのアプローチとは対照的で面白いと思います。この事例のようなデザイン的な絵作りからテクニカルな要素に分解して落とし込むといったことが、他の事例を見ても、北米のゲームスタジオの得意とする手法なのかもしれません。

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●Art Directing Horror and Immersion in DEAD SPACE
日本では「ドイツで発売できなかったタイトル」ということで、一部で話題になっているタイトルです。w
目指すホラータイトルがどういったカラーイメージで構成すべきか、映画のホラーやスペースものなどから傾向を分析したり、キャラクタデザインに関し手、クリーチャーでも無く、ゾンビでもない、タイトルコンセプトに合致したデザインバランスを模索しているところが興味深いです。

最近の海外のタイトルでは、極力画面にインフォメーション要素を表示しない傾向が強いのですが、DEAD SPACEでは背景にルートのナビゲーションをとけ込ませたデザインを行ったり、世界設定に即したインタフェースで見せるような工夫を取り入れています。背景のナビゲーションは日本の地下鉄の案内板やネオンサインがヒントになっているそうで、どうりで所々日本語の看板が登場します。

前述した AFURO SAMURAIもビジュアルアートセッションなのですが、今年のビジュアルアートセッションは、技術的な部分は概要だけにとどめて、アートワークからテクニカルに落とし込む観点で説明が行われているセッションが多くありました。こうしアートワークと技術の紐付けは色々な方法があり、その事例はアーティストにとっては非常に参考になるものが多いです。ここ3年の中で一番粒ぞろいな印象を持ちました。

●Cinematic Game Design 3 : Action!シリーズ3回目となるシネマティックゲームのテクニックを紹介するセッションです。シネマティックゲームというのは、ゲームシーケンスとカットシーンの区別ながなく、シームレスに映画のように展開するゲームと定義しています。ゲームの中に映画的演出手法が取り入れられているという事です。今回はアクションゲームをテーマに9つのテクニックを紹介しています。このセッションはスライドをきちんと公開してくれるので、ありがたいです。内容的にもきちんと系統た立てて説明されていますし、映画とゲームでの事例を交えながらのテンポの良い説明は、本当に楽しいセッションです。参考までに紹介された9つのテクニックは以下の通りです。

#1 Fight Start
#2 Pacing a shoot
#3 The suspense change up
#4 Car chase camera
#5 Foot chase tension
#6 Getting a scene of hight
#7 Unexpected location
#8 Confusing Enviroment
#9 The intime death scene

事例を見ながら解説を聞くと、的を得たテクニックだと毎回思わされます。事例として取り上げているのが古典的な名作からB級映画、最新作まで、一体どれだけ映画見てゲームプレイしているんだろう??と思ってしまいます。来年も第4弾を期待したいところです。

これで、今年のGDCも終了です。今年はアーティススト向けのセッションが更に多くなり、どれをチョイスするか迷ってしまうようなケースも出てきました。3年前と比較するとずいぶん変わったと感じます。内容的にはリリースされているタイトルのアートディレクションだったり、開発環境に関する紹介だったりと、実際にプレイしてみて、「ここはどういったアプローチで制作されたのか」見ることが出来るという点では、沢山の得るものがあるように思えます。